壱式陸攻。 必勝! 太平洋戦記(参)

九六式陸上攻撃機(G3M1~3)

壱式陸攻

必勝! 太平洋戦記(参) 必勝! 太平洋戦記 其の参 攻略事例 壱 遂行者: Hman 作戦名:太平洋戦記 リプレイ1 ターンは40とする。 これなら足りない事はない。 配置は南方艦隊を高雄にまとめるのがいいかと思う。 初期の生産 海軍は先ず零戦21を量産し、台湾・仏印に配備。 後、99艦爆(400機程度)〜96/1式陸攻と配備して行く。 陸軍は99双軽を基幹とし、適当に鐘馗1を交える。 基本戦略 当然ながら二方面作戦は避けるべきである。 南方作戦の完遂は長期戦に不可欠であるので、今回のプレイでは比島〜蘭印〜支那&ビルマ〜インドと侵攻し、太平洋戦域は持久戦を取る事とする。 いざ太平洋に侵攻する時に米航空機の圧倒的な戦力に青息吐息となりかねないと言う問題もあるが、史実通りの運命を辿るよりは幾分マシであろう。 開戦1 まず真珠湾を一撃。 99艦爆には小型艦を攻撃させる。 撃ち漏らした戦艦が出撃してくるので、一撃したらすぐに逃げる事。 その後は本土艦隊と協力してグァムを陥落せしめ、高雄に向けて針路を取る。 ウェーク〜ハワイ間に空母が存在する筈であるが、手を出さない方が無難か。 本土 全ての空母・戦艦は高雄へ移動させる。 燃料・弾薬・整備部隊・設営部隊・攻撃部隊も順次移送する。 比島・マレー その後はフィリピン・マレーの航空戦力を撃滅する。 下手な色気を出さず、とにかく飛行場を徹底的に攻撃。 でないと高雄や近辺の艦隊が攻撃されるぞ。 大型爆弾ではなく、中/小型爆弾を装備した方が効率がいい。 在泊の商船は台北へ退避させた方がよいだろう。 香港は今の所無視。 生産された零戦21型はこの高雄・サンジャックへ重点的に配備する。 英東洋艦隊を発見したら、最優先で攻撃するのは言う迄もない。 開戦直後にいきなりシンガポールを空襲すれば、これが停泊している。 見逃すなかれ。 仏印 マレー航空撃滅戦に参加出来ない軽爆等は、バンコクを攻撃する。 陸上部隊を撃滅したら、兵力・弾薬1で侵攻・占領する。 当然直後に奪還されるが、陣地構築前の敵部隊を航空機で徹底的に叩く事が出来る。 この作戦で現状兵力での持久が可能。 満州 全ての航空機・整備部隊・設営部隊は速やかに漢口へ南下させる。 現状の攻撃部隊の引き抜きさえ行わなければ、イワン共(ソ連)の心配は不要である。 支那 取り合えず手駒が足りない。 暫くは無用な攻撃は避けた方がいいだろう。 99双軽の配備を待つ。 リプレイ2 航空撃滅作戦が終了し、機動艦隊が高雄に到着した後の作戦である。 機動艦隊には対潜用に駆逐艦を必ず最大数の20隻随伴させ、同時に駆逐艦隊を数艦隊用意し、哨戒に当たらせる。 これを徹底しないと悲しい運命が君を待っている。 輸送艦隊に軽空母等を加えておくと、先制攻撃の機会が増える上に、輸送船に対する囮とする事が出来る。 戦艦にやらせるのもいいかんぢだ。 空母機動艦隊 搭載されている97艦攻を極力99艦爆に積み替える。 対地攻撃には急降下爆撃が向いているが故だ。 命中率が4倍以上である。 比島〜香港〜ブルネイ〜クチン〜リンガ〜シンガポールと攻撃していく。 陸上基地と違い、空母からの航空攻撃は弾薬を一切消費しない。 故に空母はコキ使ってやらねばソンと言う物だろう。 孤立する事は絶対に避け、周囲に駆逐艦隊を配置して置く事。 下手な所に移動すると、潜水艦の集中攻撃を食らう。 因みに敵潜水艦の移動は毎ターン必ず航路フェイズに行われ、日本基地間を直線で移動する様である。 戦艦部隊 機動艦隊のフォローとして艦砲射撃を行うのもいいが、爆撃に比べて非常に弾薬消費が激しい。 敵基地に同程度の被害を与える為には、7〜8倍の弾薬が必要となる。 大和型など、主砲を撃ち尽くすと1艦800tもの弾薬を消費する。 弾薬の生産が軌道に載るまでは、無駄遣いは避けたい物だ。 蘭印〜比島に敵巡洋艦隊が存在しているので、艦爆しか搭載していない空母に代わってこれを仕留める事と、「囮」としての役割を主眼とする。 英東洋艦隊さえ沈めればインドorソロモン戦までヒマなので、空きドックで対空改装・・・したいがドックも忙しいんだな、これが。 兵法の邪道なれど、遊ばせて置くより無さそうである。 戦術的にはともかく戦略的に見た場合の「戦艦」と言う物が、空母に比べてどれ程非効率的かと言う事を、良くシミュレートしているゲームであると言えよう。 上陸戦 機動部隊に追従し、各基地を占領していく艦隊が当然必要である。 占領・採掘資源だけが目的ならば、上陸時の兵員・弾薬は「1」でいい。 基地航空隊 占領につれ、高雄の海軍航空隊主力はマニラ〜レイテ〜ダバオと転進。 基地占領 陸上部隊を壊滅させた基地はほぼ無力である。 特に占領する必要はない。 最終的にバンコク〜メダン〜バリ〜ハルマヘラ〜高雄のラインを確保。 攻撃範囲内の敵基地は無力化しておく。 余裕が有れば輸送船を近づけぬ様、潜水艦を監視役として置けばよい。 それが叶わずとも哨戒範囲内であれば取り合えずは安心。 月に一度偵察して置けば完璧である。 要塞化される前に叩き潰す事だ。 太平洋方面 B17からの完全なる防衛は不可能であろう。 たまの奇襲で整備兵をやられるわ補給しようと入港した途端に、輸送船が沈められるわ戦闘機練度は下がるわロクな事が無い。 パラオも含め、全ての兵力は速やかに引き上げる事だ。 特に整備部隊。 上陸艦隊を発見したら97大艇で叩く。 極力占領されない様に。 トラックは絶好のロケーション。 捨てるには少々惜しいか。 実際の日本軍はトラックの確保の為にニューギニア(ソロン〜ラバウル間)を占領した事を述べて置く。 基本的にはグァム&サイパンに2式大艇及び整備部隊を配備し、攻撃圏内は絶対死守・・・と言う感じでいいだろう。 保険としてサイパンに巡洋艦を停泊させて置くと安心。 本土 空母から下ろした97艦攻は主に本土〜ダバオに配備する。 敵基地からの爆撃は無く、驚異は敵空母だけである上に97艦攻は敵艦爆より航続距離に優る。 つまり、これで十分である。 リプレイ3 輸送 敵潜水艦の驚異を避ける為、輸送は極力一度に行う事だ。 出航時は駆逐艦か海防艦の1隻を先行させ、万全の哨戒を行い、駆逐艦や海防艦を20隻づつ横須賀・高雄・リンガに配備して置き、発見次第速やかに攻撃に向かう。 潜水艦が増えると手が付けられなくなるので、発見したら確実に撃沈しよう。 こちらの損害は余り気にするな。 南方の拠点は大泊地を持ち、燃料自給可能なリンガ。 本土方面は同様の理由から横須賀。 中継基地は高雄がいいだろう。 支那方面の鉄鉱石は鞍山で、南方のボーキサイトはシンガポールで加工してから輸送すると輸送回数自体が少なくなり、結果として商船の被害が抑えられる。 航空機 バクリパパン・高雄・マニラ・沖縄・上海辺りを中継基地とする。 海に面している為、燃料等の補給が容易だからだ。 仏印の海軍攻撃機は太平洋に転進。 急降下爆撃の不可能な機体は、大陸戦には不要なのだ。 命中率が低いので弾薬がもったいない。

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一式陸攻の性能について教えてください。

壱式陸攻

光文16年12月10日、マレー半島東岸クアンタン沖。 高度三三〇〇メートル。 「シンガポールで行きたいところ~?」 「ラッフルズホテル! 本場のアフタヌーンティー飲んでみたい!」 「あそこは陸軍が接収しちゃうんじゃないかなあ」 「うわ……じゃあ行かない」 「憧れますよねブリトンのアフタヌーンティー。 ウェジウッドで淹れた紅茶と、後は段々になった銀のトレイにスコーンとかサンドイッチとかがのってて」 「どうせ陸軍に占領された日からメニューは麦茶とおにぎりだけになるから」 「あるある」 双発の火星エンジンの振動が、小刻みに身体を震わせていた。 九六式陸攻の金星エンジンより大型で、馬力は約一・五倍。 この一式陸攻は、今年の4月に制式採用され生産が始まったばかりの最新鋭中型攻撃機だ。 新鋭機といっても居住性は良くない。 空気抵抗を減らすため、九六式陸攻までは胴体下に吊り下げられていた魚雷を機内に収納したものの、弾倉に扉が無いので外気が絶えず流れ込んでくる。 銃座のための切り欠きからもだ。 一式陸攻は高度九〇〇〇メートルまで上昇可能だが、機内を荒れ狂う氷点下の風は搭乗員から体力と集中力を奪う。 何あのムワッとした感じ」 「あのムワッとした感じが良いんだけど」 「ええっ? いや有り得ないから、小日向あんた飛び過ぎで味覚おかしくなったんじゃないの」 「じゃあ多数決とります、この中でパクチーありだと思う人~」 「は~い」 「最初はやばいけど二回目から病みつきになりますよねパクチー」 「内地でも流行らせたい」 「いや待って、パクチー無いから、絶対無いから」 「あの~壱岐隊長、隊長はパクチーあり派ですか無し派ですか?」 「ちょっとみんなうるさすぎぃ!」 中隊長兼射爆員の壱岐春香は、ついに飛行帽に巻き付いた伝声管聴音器を外して爆撃席から後ろを振り返った。 エンジンの振動より吹き込む風より、まず搭乗員がやかましい。 「あのね、敵いるからねシンガポール? 敵機の圏内なのに何でみんな観光気分なの? 死ぬの?」 「いや~死ぬかもしれないので、せめて気分だけでも味わおうとですね」「それより隊長は、インドシナ料理のパクチーについて……」 「わかったから静かに!」 「は~い」 「小日向、ゆっくり高度を下げて。 前川、敵戦闘機が来ないか警戒よろしく。 萩原は現在地の再確認、奥山は先行索敵機からの続報に注意して」 春香の指示に、操縦席に座る主操縦員の小日向と副操縦員の安斎が頷いた。 その後ろ、航法を担う主偵察員の萩原が机に 航空図 ( チャート )を広げ、電信員の奥山が無線機に向かう。 副偵察員の前川が七・七ミリ旋回機銃を上空に向けて警戒し、搭発員(搭乗整備員)の高橋はエンジンの計器盤に目を光らせる。 中攻乗りは家族だとよく言われる。 同じ海軍航空隊の搭乗員でも、単座の戦闘機乗りはいわば孤高の存在だ。 空に上がれば何時間もたった一人で航法・操縦・戦闘をこなさないといけないし、仲間とて 撃墜数 ( スコア )を競うライバル同士。 目つきからして普通の子とは違う。 侍のような気迫があって戦闘意欲が強いとされるA型が向いているらしい。 それに対し大型機に乗り込むのはO型(洒落ではなくて、葦原海軍では適性検査に血液型が役立つと本気で信じられていた)、おおらかで仲間と和気藹々やれる性格が望ましいとされる。 一式陸攻の乗組員七人は文字通り運命共同体、全員で一本の槍になって敵陣・敵艦に突っ込む。 死ぬ時も一緒だ。 だからといって、今日は騒ぎ過ぎだと思う。 とりあえずツドウモ基地に戻ったら、高橋をパクチーサラダの刑にしてやろう。 パクチー美味しいし。 なんだかんだで、部下達の会話はしっかり聞いている春香であった。 「北緯四度、東経一〇三度五五分。 索敵機が敵艦隊を見たというのは、間違いなくこの付近です」 航空図を見ながら計算盤を弾いていた萩原が報告する。 第一小隊長を兼ねる萩原は、下士官兵で何千人に一人という専修科コースを卒業した優秀な偵察員で、夜間だろうと雲に入ろうと決して航法が狂わない。 「隊長、そろそろ帰りの燃料が足りなくなります!」 不安げにそう言ってきたのは高橋だ。 既に南に一一〇〇キロ、雷装した一式陸攻の行動半径に達したため北西に変針している。 「うーん、今日こそは決着をつけたいなあ」 春香は、機首いっぱいに張られたアクリル風防越しに南海の空を見回した。 出かける時は快晴だったが、マレー半島に近付くにつれ雲が増していっている。 昨日は味方の潜水艦が敵艦隊を見つけたものの、情報の確認に手間取り航空隊が出撃できたのは夕方で、おまけに途中でスコールに見舞われた。 最悪だったのは暗闇の中、一部の機が味方の南遣艦隊それもよりによって司令長官の小澤中将が座乗する重巡鳥海を敵艦と誤認し、あわや同士討ちになりかけたことだ。 司令部から大目玉を食らい、意気消沈してツドウモに帰ってきたのは深夜。 来たばかりの飛行場での夜間着陸を全機無事にできたのは奇跡と言って良い。 そこから整備の子達が徹夜でもう一度飛べるようにしてくれて、今朝は夜明け前に索敵機を発進させ、その二時間後には春香達も見切り発車した。 昨日のように敵艦隊発見の知らせを聞いてから出撃したのでは、間に合わないと考えたからだが…… 「こうなったら、余計な物を捨てて機体を軽くするしかありません。 燃料節約です!」 「捨てるって何を?」 「まず服を脱ぎます」 「無いわ~」 また始まった部下達の小話をよそに、春香は下方、高度二五〇〇メートル付近に広がる雲海に目を凝らす。 「あ、何か光った」 右前方、積雲の切れ間。 春香が指差した方向に、萩原がすかさず双眼鏡を向ける。 「ブリトン軍のウォーラス水偵が一機、低空を飛んでいます。 隊長、これはもしや」 「うん、当たりだね」 あのウォーラスは、恐らく対潜哨戒中。 小型の水偵が、こんなところを単機で対潜哨戒……間違いない、あれは敵艦の搭載機だ。 後を尾ければ、敵の艦隊に辿り着ける。 「小日向、第一中隊にバンクをお願い」 「えっ、一番槍譲っちゃうんですか? 隊長が見つけたのに」 「後詰めも大事な役目だよ」 春香機は、離れて飛ぶ第一中隊の指揮官機に向けてバンクを振る。 しばらくして指揮官機の方でも敵機を見つけたらしく、バンクを振り返すと降下に入った。 すかさず第二中隊が続く。 春香は、直属の第一小隊列機に手で合図を送った。 翼を連ねて飛ぶ二番機機長の桜井、三番機機長の本田は、共に北方事変から戦ってきた仲間だ。 彼女達も他の中隊を先行させたことに少し不満そうな顔だったが、合図に従い春香機の後ろに単縦陣を作る。 さらに後続する第二小隊と第三小隊。 合わせて九機が、第三中隊長である春香の配下。 春香達が属する鹿屋航空隊は、開戦前に全機が九六式陸攻から一式陸攻に更新されている。 虎の子の部隊が南方に進出したのは他でもない、12月2日にシンガポールに到着しブリトン東洋艦隊に配備された新型戦艦プリンセス・オブ・ウェールズと巡洋戦艦レパルスに対抗し、開戦となればこれに痛撃を与えるためだ。 鹿屋航空隊の一式陸攻二十六機は全機雷装。 この他に本山航空隊から九六式陸攻二十六機うち雷装十七機・爆装九機、美幌航空隊から九六式陸攻三十三機うち雷装八機・爆装二十五機。 あわせて八十五機からなる大攻撃隊がこの海に展開している。 春香機の前方、第一中隊が敵水偵を追尾しつつ緩やかに高度を下げる。 その左に第二中隊。 春香の第三中隊は右についた。 雲に入る。 風防の外が灰白色に塗り込められる。 厚い雲だ。 経験の浅い操縦士なら上下左右の感覚が無くなり空間失調症に陥る危険があるが、小日向は慣れたもので計器と己のカンを頼りに操縦桿を大胆に押し込んでいく。 高度八〇〇メートル。 唐突に、視界が一面のコバルトブルーに変わる。 「見えた!」 前方距離約二〇キロ、海面に白波を立てて進む二つの大きな艦影。 艦橋や煙突が艦中央に、まるで城の天守閣のようにそびえている。 明らかに戦艦だ。 接近して高度を落とすにつれ、艦影が鮮明になっていく。 横幅が太く艦橋ががっしりしているのがプリンセス・オブ・ウェールズ、その右舷後方、横幅が細くて艦橋が三脚檣なのがレパルスだろう。 周囲には護衛の駆逐艦が三隻。 前方を飛んでいたウォーラス水偵が、慌てて空域を離脱していく。 今頃になって尾行に気付いたらしいが、もう遅い。 「ふふっ、道案内ありがとう」 敵艦隊の上空に、春香が一番恐れていた戦闘機の姿は無かった。 もしブリトン空軍のバッファロー戦闘機が直掩していようものなら、重さ八〇〇キロ以上の魚雷を抱えてスピードで劣る上に雷撃中は回避行動ができない攻撃機は恰好の餌食となるところだった。 開戦と同時に行われたマレー半島北東部への上陸作戦で、敵の飛行場があったコタバルを占領したのが効いているのだろうか。 現在の高度三〇〇メートル、敵艦隊との距離一六キロ。 視界は良好。 妨害する敵機もいない。 訓練通りに雷撃できる。 春香は伝声管の送話口を手に取った。 「みんな聞いて。 打ち合わせ通り、第一中隊はプリンセス・オブ・ウェールズ、第二中隊はレパルス、私達は最後に見比べてどっちかダメージの少なそうな方を雷撃するよ」 機内の空気は、先程までとは打って変わって張り詰めている。 ここにいるメンバーは北方事変の渡洋爆撃に参加した水平爆撃のベテランだが、海上での敵艦雷撃はこれが初めてだ。 当初は、東洋艦隊がシンガポール軍港内に停泊中のところを爆撃するという話もあった。 低空で敵艦に肉迫しての雷撃は、高高度から行う水平爆撃よりはるかに危ない。 さっきのみんなのはしゃぎっぷりは、不安の裏返しだ。 「よし決めた! 魚雷を命中させられたら、そのラフ何とかホテルでお祝いをしよう。 私がみんなにアフタヌーンティーをご馳走してあげる!」 「ええっ、本当ですか隊長!?」「ラッフルズホテル超高いですよ!」「いや、値段以前に陸軍が……」 「大丈夫! 泳げない陸軍がマレーに上陸できたのは海軍のおかげなんだから。 当然使わせてもらうよ」 少女達から歓声が上がる。 春香は笑って、 「鹿屋航空隊ここにあり! 私達の力で敵戦艦を必ず航行不能に追い込んで、後続の水上部隊にきっちりバトンタッチしよう!」 この時、春香は目前に迫った敵戦艦を撃沈できるとまでは考えていない。 一昨日の真珠湾攻撃で南雲機動部隊がヴィンランド戦艦多数を沈めたというニュースは既に耳に入っているが、あれは「据物斬り」、停泊中の戦艦を奇襲したタラント空襲と同じ事例だ。 他にも老朽化した練習戦艦が航行中に空襲で沈められた例はあったが、速力・装甲・対空兵装が第一線クラスの戦艦を作戦行動中に航空攻撃のみで沈めることは不可能というのが、当時の世界常識だった。 対空砲火で弾幕を張りつつ高速で回避行動を続ける艦に爆弾を命中させるのは至難の業だし、魚雷も多くはかわされてしまうだろう。 命中しても、戦艦は砲戦を想定しており装甲は分厚い。 春香は大艦巨砲主義者というわけではないが、日向に乗り組んでいた時期もあり戦艦というものがいかに堅牢かよく知っていた。 ましてプリンセス・オブ・ウェールズは海軍大国ブリトンが威信をかけて建造し、今年の1月に就役したばかりの新型戦艦だ。 しかし、沈めることが無理でも浸水で動きを鈍らせたり、戦艦の弱点、舵やスクリューを壊して航行不能に追い込んだりすることはできる。 念頭にあるのは、兵学校で教わった漸減邀撃作戦。 一式陸攻も、元はそのために開発された機体だ。 現在、ブリトン東洋艦隊に対抗できる葦原の水上戦力としては、重巡愛宕を旗艦とし高速戦艦金剛・榛名を有する近藤中将の第二艦隊と、重巡鳥海を旗艦とする小澤中将の南遣艦隊がある。 いずれも昨日の捜索で燃料を切らして補給のため北のカムラン湾まで後退しているが、今は全力でこちらへ向かっているはずだ。 さらに散開している潜水艦部隊も、いずれ集まってくる。 ここで春香達が敵戦艦にダメージを与えて足止めできれば、後から来る水上部隊か潜水艦が止めを刺してくれる。 春香はそう信じた。 先行する第一中隊が、敵艦隊に近付いていく。 不意に、空中にぽんぽんと不吉な黒点が湧いた。 砲弾の炸裂煙だ。 敵の対空砲火が始まったのだ。 戦艦の舷側にずらりと並んだ高角砲から一斉に赤い閃光がきらめいたと思うと、空がみるみるうちに爆炎と硝煙に覆われる。 海面に落着した砲弾の破片が、おびただしい水煙を上げる。 今まで見たこともない熾烈な対空砲火だ。 ここへ攻撃をかけるのか。 春香は背筋がぞくりと粟立つのを感じた。 至近距離の爆発の連続で、第一中隊の各機が木の葉のように揺れている。 しかし味方は怯まない。 第一中隊指揮官機が翼を左右に力強く二度振った。 「全機突撃」の合図。 第一中隊・第二中隊は海面すれすれまで高度を落とし、プリンセス・オブ・ウェールズとレパルスに肉迫する。 訓練時の高度二〇メートルよりさらに低く、プロペラが海面を叩くのではないかと思えるくらいの超低空を這う。 危険だが、こうすれば俯角のとれない敵高角砲の弾に当たりにくい。 代わりに、戦艦のそこかしこにハリネズミのように装備された対空機銃が火を噴いた。 猛射の中、先頭を行く指揮官機はプリンセス・オブ・ウェールズに衝突するぎりぎりのところで、魚雷を投下し機首を上げた。 単縦陣を組んだ後続機も次々と魚雷を放ち、プリンセス・オブ・ウェールズの上ぎりぎりのところをすり抜けていく。 投下されたのは、新型の九一式魚雷改二。 空中姿勢安定板を装着し、さらに入水後のローリングを修正する加速度制御システムを備えた画期的な魚雷で、荒れた海に高速で投下しても向きが逸れたり海底に突き刺さったりすることなく、狙った方向に確実に進む。 頭部炸薬量も従来の魚雷より増量され、喫水線下の防御装甲を貫通できる。 投下から約二〇秒後、プリンセス・オブ・ウェールズの右舷に立て続けに白い水柱が上がった。 「命中、四発です!」 副偵察員前川の上擦った声。 戦艦の艦橋よりも高く水柱が屹立する様は、まるで絵画に描かれた葦原海海戦だ。 プリンセス・オブ・ウェールズは船体が傾き、動きが鈍っている。 かなり浸水しているようだ。 変針せず左に旋回し続けているところから見て、舵やスクリューをやられた可能性もある。 一方のレパルスは、海面に複雑な 航跡 ( ウェーキ )を描き、未だ三〇ノット近い高速で魚雷を全て回避し続けている。 こちらの攻撃隊に艦首を向けるよう回頭を続け、横っ腹を決して見せず、なかなか射点をつかませないのだ。 艦首は被弾面積が最も少ない上、艦首波により魚雷は左右いずれかに逸れてしまう。 レパルスの艦長は相当な手練れだと、春香は見て取った。 「よし、私達はレパルスをやろう! 北西から回り込んで!」 気付かれないよう所々に浮かぶ断雲に身を隠しつつ、南下するレパルスの右舷を狙う。 雷撃は敵艦の側面に魚雷が当たるよう艦首から一五~九〇度の射角で、距離八〇〇メートルの位置に自機を持っていく。 最良の射点につけるかどうかが勝負だ。 逆にレパルスにとっては、いかに攻撃機側の射点を外させるかの勝負。 今も艦首を左右に振るジグザグ航行で、攻撃隊にフェイントをかけている。 「流石ロイヤルネイビー、敵ながらやりますね」 双眼鏡を構えた萩原が唸る。 「私達の先生だからね」 ブリトンはかつて葦原の同盟国であり、海軍の師であった。 春香が過ごした海軍兵学校の校舎はブリトンから運んだレンガで建てられていたし、校内にはネルソン提督の遺髪が大切に祀られていた。 教本はブリトンから輸入したもので、ブリトンのテーブルマナーを習い、ブリトンの歌を歌った。 本国ではこの戦争を、ブリトンのアジア支配に終止符を打つ植民地解放戦争だと喧伝している。 多くのブリトン人が、葦原人を含めた有色人種を差別していることも知っている。 それでもブリトン海軍に特別な思いを抱いてしまうのは、その伝統を受け継いだ葦原海軍乙女の 性 ( さが )か。 「あっ! レパルス、右へ大きく回頭します!」 春香達の目の前で、レパルスは一気に北西に旋回した。 第二中隊の放った魚雷が、例によって艦首ぎりぎりをかすめていく。 相変わらず見事な操艦だ。 しかし、さすがのレパルス艦長も、断雲を盾に北西に回り込んでいた春香の第三中隊まではカバーし切れていなかった。 今、春香と直属の第一小隊の正面に、レパルスの左舷が見えている。 そして遅れてついてきた第二小隊と第三小隊は、さらに右舷へと回り込んで春香達と反対側からレパルスに対峙した。 期せずして、第一小隊と残る二個小隊でレパルスを挟撃する形になったのだ。 萩原が叫ぶ。 「目標との距離一五〇〇、高度二五!」 「小日向! 距離八〇〇まで近付けちゃって! 速度二三〇ノット!」 「了解!」 「高橋! 無理させるけどエンジンよろしくね!」 「はい!」 春香機を先頭に、第一小隊三機が突っ込む。 隊長の春香が自ら雷撃手を務める。 操縦席のさらに前、全面アクリル張りの風防だけで空と隔てられた機首爆撃席。 足元の照準器は水平爆撃用なので、今日は使わない。 雷撃用の照準器もあるが、この距離なら目測の方が早い。 「距離一三〇〇、高度ニ〇!」 間近に迫ったレパルスは、味方の金剛型戦艦によく似ていた。 昨夜の同士討ち未遂事件を思い出し攻撃を躊躇しそうになるが、こちらはブリトンの国旗を掲げている。 春香は魚雷投下スイッチに指をかける。 後少し。 「距離一〇〇〇、高度一五!」 「一〇まで潜って!」 レパルスの対空機銃が、噴煙を吐き出した。 ブリトンが誇るヴィッカース社製二ポンド八連装ポンポン砲。 発砲の反動で自動装填される仕組みで、ラッパのような銃身がリズミカルに動き、一分間に八百発もの四〇ミリ榴弾を撃ち出してくる。 赤い曳痕が中空を刻む。 春香機の周囲で時限信管が作動し、いくつもの火焔の花が咲いた。 至近距離で炸裂した破片が機体表面に当たってガンガンと嫌な音を響かせる。 敵の射撃は正確だ。 恐らくは優秀な射撃指揮装置と連動している。 葦原の機体は航続力や速力と引き換えに防弾性が皆無だし、いったん雷撃進路に入ると命中率を高めるため投下までほぼ等速直線で飛び続ける必要があり、回避ができない。 直撃しないことを祈るしかない。 「距離八〇〇、高度一〇! 隊長!」 風防の外、炎と煤煙からなる濃密な弾幕が、一瞬だけ開けた。 レパルスの船体に、手を伸ばせば届きそう。 距離六〇〇。 「テーッ!」 春香は、魚雷投下スイッチを押した。 爆管に点火するパン!という音。 機体が一気に軽くなる。 魚雷が抱締索を外れ自由落下を始めたのだが、春香からは見えない。 その時春香に見えていたのは、レパルスの甲板で対空機銃を撃つブリトンの少女達だった。 高高度からの水平爆撃では見ることのない、敵兵の顔。 見開かれた青い瞳と目が合う。 その時、彼女達は何を思っただろう。 自分は、どんな顔をしていただろう。 一瞬だった。 小日向が機首を上げ、視界は蒼穹に転ずる。 「飛び越えて!」 ここで旋回したら蜂の巣にされる。 全速力で直進し、レパルスの上を突っ切るのみ。 際どくかすめたとほぼ同時に、後ろを見張る前川から報告。 「魚雷、水中に突入! 真っ直ぐ進んでます!」 直後、機が左に旋回したので、春香からも自分の放った雷跡が見えた。 良かった。 制御システムのジャイロが正常に作動している。 内部の燃料と高圧空気の混合ガスが高エネルギー燃焼を始め、魚雷は45ノットの高速で進んで行く。 その先には、レパルスの長い左舷舷側。 そして。 「命中!」 海を引き裂くような轟音と共に、一際高い水柱が上がった。 レパルスが大きく揺れ、はっきりと左に傾く。 「やった」 思わず笑みが零れる。 皆、この瞬間のために厳しい訓練に明け暮れてきた。 「お見事です隊長!」 小日向の喜びの声に春香が応えようとした、その時だった。 「隊長、二番機と三番機がっ!」 前川の悲鳴。 風防越しに左を見た春香は、凍り付いた。 春香機の後に続いて魚雷を投下した二番機が、右翼のつけ根に被弾していた。 「桜井!」 みるみるうちに片翼が折れ、桜井機は長い炎の尾を曳き、きりもみしながら海面に激突する。 その後ろ、本田の三番機は両翼が火を噴いていた。 ポンポン砲にやられたのだ。 一式陸攻は主翼が燃料タンクになっている。 防弾は無い。 一度火がついたら、もう助からない。 「本田、機首を上げて! 脱出を!」 届かぬと知りつつ、春香は叫んだ。 炎に包まれた座席で、本田と彼女の部下達は春香に対し笑顔で敬礼を送っていた。 空中で爆発。 破片が降り注ぎ、海面に波紋をつくる。 「ああ……!」 今朝、同じ基地の食堂で仲良く朝食をとった仲間が。 その前の晩には一緒にサイゴンの夜店に繰り出した友が。 北方事変からずっと戦ってきた、熟練の搭乗員が。 七人と七人、十四人が一瞬で。 中攻乗りは家族だ。 死ぬ時も一緒だ。 「隊長、二番機と三番機が投下した魚雷、二本とも命中です」 萩原の冷静な声で、春香は辛うじて中隊長としての自分を取り戻す。 左舷にほぼ同時に魚雷三本が命中したレパルスは、急速に復元力を失い、転覆しつつあった。 攻撃した側である春香にとっても、それは驚くべき光景だった。 前座に過ぎないはずの航空攻撃で、戦艦が沈んでいく。 数秒前までの世界の常識が塗り替えられようとしている。 しかし春香には、時代が変わる現場に立ち会えたという感慨は無かった。 転覆するレパルスに向けて、敵の駆逐艦が二隻近付いてくる。 「攻撃しましょう! 魚雷は無くても、まだ機銃が撃てます!」 副偵察員の前川が、目を真っ赤にして言った。 萩原が制止しようとするのも振り切り、 「お願いします隊長! 二番機と三番機の仇を!」 三番機の搭乗員の中には、前川の同郷の幼馴染がいた。 春香は機首の七・七ミリ旋回機銃を、そっと握り締める。 尾部には二十ミリ機銃だってある。 駆逐艦相手なら損害を与えられるだろう。 転覆したレパルスの周囲の海面に、大勢のブリトンの少女達が浮かんでいるのが見えた。 制空権は完全にこちらにある中で、二隻のブリトン軍の駆逐艦はわき目もふらず身を挺して救助に向かってくる。 魚雷投下の瞬間に顔を合わせた、敵国の少女達を思い出す。 春香は首を振った。 「……そんなことしても、あの子達は喜ばないよ」 前川はうなだれ、やがてすすり泣きが漏れた。 日頃は得意の動物の真似でみんなを笑わせたりするような、明るくて優しい子だ。 萩原が、後ろからそっと無言で抱き締める。 春香は席を立つと、皆に湯呑を配り、携帯航空糧食のサイダーをついで回った。 無事に雷撃を終えた第二小隊と第三小隊の六機も、春香機の周りに集まってくる。 艦尾から沈むレパルスを見ながら乾杯した。 味方機の電報は最初「レパルス沈没、プリンセス・オブ・ウェールズは攻撃続行の要あり」だったのが、数分後には「プリンセス・オブ・ウェールズ沈没」に変わった。 敵戦艦は二隻とも沈んだ。 シンガポール防衛の要であったブリトン東洋艦隊はここに壊滅したのだ。 「奥山、ツドウモ基地からのビーコンは受信できてる? 萩原はどう?」 「ばっちりです!」「ビーコンが無くても、基地までご案内できますよ」 「高橋、帰りの燃料はもちそう?」 「はい、何とか!」 「そっか。 ……それじゃあ、帰ろう」 光文16年12月10日。 開戦から二日。 まだ誰もが、始まったばかりのこの戦争に慣れていなかった。

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第壱號 壱岐春香の章

壱式陸攻

設計の経緯 [ ] は加盟国の主力艦(・)の保有量に制限を設けたが、結果として廃艦となる新造主力艦を改造した大型空母の出現を招いた。 このことはとを取り込んだの複雑化を招き、空母増勢という新しい方面のを招きかねないことから、では航空母艦の保有量にも制限がかけられた(しかしながら、いったん出現してしまった空母の存在は「敵空母による日本本土空襲」の潜在的脅威でありつづけたこともあり、日本海軍では(昭和10年)のでは空母全廃に持ち込もうとして失敗することになる)。 ロンドン条約のために水上艦の増勢が不可能となったため、長中将は長らく暖めていた長距離雷撃機の開発に乗り出した。 技術部長、技術部主任、のちに参加する総務部員らスタッフを揃え、連日検討した。 このような経緯の中で、陸上基地から発進して敵艦船(主として敵空母)を攻撃できる「」が考案された。 この当時、海軍機メーカーの中で大型全金属機の製作能力をもっていたのは(広廠)と(のちの三菱航空機)であったため、まず広廠で「七試特種攻撃機」(「七空攻撃機」とも呼称される、後の)の開発に着手、次いで三菱に「八試特殊偵察機」1機のが発注された。 八試特偵は(昭和9年)4月に初飛行した後、計画が変更され7. 7ミリ機銃二挺を搭載する「八試中型攻撃機」へと改称された。 さらにこの試作の成果を元に九試陸上攻撃機が計画され、に発注された。 設計主務者は八試特偵と同じ本庄季郎技師。 試作機は10年6月に完成し、7月((昭和10年)7月)に初飛行に成功した。 11年6月2日に九六式陸上攻撃機として正式採用された。 大型攻撃機である九五陸攻は「大攻」、中型の九六陸攻は「中攻」と称された。 技術面の特徴 [ ] 九六式陸上攻撃機 長距離攻撃機として、との低減に重点を置いて設計された。 の採用 - 金星はの技師により開発された。 引込式 - 飛行時の空気抵抗を大幅に削減する。 部分引込式としては日本軍用機での採用第1号(収納扉を有す完全引込式の日本軍用機採用第1号はの)• (ちんとうびょう)の全面採用 - 飛行時の空気抵抗を大幅に削減する。 採用は同じ三菱製のと同時。 金属板の締結に使われるは、金属板表面に丸い頭が出る。 高速で飛ぶ航空機ではこれが空気抵抗の原因となるので、頭の出ない特殊な沈頭鋲を使用した。 この結果、機体表面は平滑に仕上がった。 と帰投方位測定機• 油圧式 - 製(住友金属によるライセンス生産)。 機体重量の半分の搭載量を誇る画期的な航空機だった反面、胴体を「魚雷型」とよばれる絞られた細い形状としたため機内に爆弾倉を設けることができず、やは胴体下に吊り下げるしようとなったことにより、それらは空気抵抗を生じた。 また、爆撃機特有の機首風防を廃しているため前方の防御火力(機首銃座)は無く、特に世界的に1930年代後半以降必須となっていた防弾装備も皆無であるなど、軍用機(爆撃機)としては未だ発展途上の機体であった。 そのため爆弾倉(爆弾倉扉付)と機首風防(機首銃座付)を設け、防弾装備(防漏燃料・タンク。 (昭和14年)の初期量産型(I型乙)の時点で装備)を備えより高速な日本初の本格的かつ近代的な爆撃機は、本機の翌年に制式制定された陸軍のの登場を待たなければならない。 戦歴 [ ] 編隊飛行を行う九六式陸上攻撃機 では航続性能を生かし、設計本来の目的ではない対地に多用された。 まずやのを発進し、を越え、で孤立する現地部隊を支援する爆撃を行い帰還した。 これはとして国内に大きくされ名を揚げた一方で、戦闘機に撃墜されるなど被害も多かった。 その後、基地が本土に進むと、中国奥地のや等の都市を爆撃した。 当時は欧米諸国が本格的な単葉戦闘機を中国はじめ各国に売り込んでいたことから、1937年8月20日に南京を空襲した際には迎撃したに敵損害なしで6機が撃墜されるなど、渡洋爆撃初期から損害が続出していたが、随伴できる戦闘機は存在しなかった。 このため長距離飛行が可能な戦闘機の必要性が真剣に検討され、十三試双発陸上戦闘機、後のの誕生につながった。 なおも陸攻の護衛に活用されたが、それは結果に過ぎず、長距離護衛のために開発されたというのは俗説で誤りである。 太平洋戦争では、(昭和16年)の開戦当日から連日 台湾を発進してフィリピンのアメリカ軍飛行場を爆撃し、短期間にアメリカの航空戦力を壊滅させた。 さらにのでは、と協同でイギリスのとを撃沈し、戦艦に対する航空優位を印象付けた。 しかし、(昭和17年)のでは魚雷が間に合わず、大きな戦果を上げられなかった。 また5月のでは敵艦に命中弾を与えることが出来ず、効果的な対艦攻撃が出来なかった。 (昭和18年)のでは夜間雷撃を成功させ、に2本、とに各1本(共に不発)の魚雷を命中させている。 なお、「」として国民に広く知られる事となるを運搬したのも、九六式陸攻の版であるである。 (昭和17年)にのに二波408人を降下させたのは延べ45機、にのへ二次に渡り700人を降下させたのは28機の九六陸輸であった。 その後は徐々に第一線を後継機に譲り、輸送などの後方任務につくことが多かったが、末期には老朽を押して実用化までのつなぎとしてとを搭載したとして用いられたり、練習航空隊で使われていた機が夜間雷撃を行うなど再び一線に立った機体もまた少なくなかった。 派生型 [ ] 元山航空隊所属の二一型 八試特殊偵察機(G1M1) 九六陸攻の基になった機体。 社内名称「カ-9」。 とされるが、実質的には研究機だった。 「」水冷W型12気筒500馬力発動機を搭載、日本初の自動操縦装置と引き込み脚を装備していた。 胴体形状は九六式陸攻とはかなり異なる。 後に7. 7mm旋回機銃2挺を追加装備し、名称が「八試中型攻撃機」に変更されている。 1機生産。 短時間で開発するため操縦系統にはの標準部品を流用したところ、操縦装置の剛性が不十分なのにかえって操縦性がきわめてよいという結果を出し、これを元に二号二型にあえて操縦索を伸び易いものにする「剛性低下式操縦索」を採用、では初期型から昇降舵に用いられた 九試中型陸上攻撃機(甲案型) 八試特偵を基にして尾翼胴体を再設計し操縦席が正副並列式に改められ、銃座と魚雷・爆弾搭載装置が搭載された陸攻型。 甲案・乙案ともに社内名称は「カ-15」。 偵察席が操縦席後方にある。 1、2、5、6号機は91式水冷600馬力を装備し、3、4号機は三菱「」二型空冷680馬力を装備している。 プロペラはNW116木製4翅固定ピッチ。 6機生産。 九試中型陸上攻撃機(丙案型) 偵察員席が操縦席より前に配置され、機首に透明銃座を設けた。 甲案に比べ機首が短縮され、操縦席の風防は盛り上がった形になっている。 7~10号機・12~21号機の発動機は「金星」二型を装備し、プロペラはNW126木製4翅固定ピッチ。 11号機は修理の際に発動機を「金星」三型を換装し、プロペラも金属製3翅可変ピッチとされた。 15機生産。 九六式陸上攻撃機一一型(G3M1) 甲案型を採用した量産型。 発動機は金星三型でカウルフラップが追加された。 三翅可変ピッチプロペラ装備。 後方視界向上のため、胴体上部と操縦席風防が丸みを持つ断面形状に変更された。 34機生産。 九六式陸上攻撃機二一型(G3M2) 発動機を「金星」四二型に換装しプロペラ直径を3. 20mに変更したもの。 343機生産。 整備兵に見送られつつ離陸する二三型 「金星」五一型装備の最終生産型で全機で生産された。 発動機の強化に伴い燃料搭載量も5,182リットルに増加された。 412機生産。 諸元 [ ] 制式名称 八試特殊偵察機 (エンジン換装前) 九六式陸上攻撃機一一型 九六式陸上攻撃二一型 九六式陸上攻撃二三型 機体略号 G1M1 G3M1 G3M2 G3M3 全幅 25. 00 m 全長 15. 83 m 16. 45 m 全高(水平) 4. 532 m 3. 685 m 自重 4,775 kg 4,770 kg 4,965 kg 5,243 kg 全備重量 7,003 kg 7,642 kg 7,778 kg 8,000 kg 発動機 九一式(離昇650馬力) 金星三型(離昇910馬力) 金星四二型(離昇1,075馬力) 金星五一型(離昇1,300馬力) 最大速度 265. 7mm旋回機銃2挺(機首・後方・八試中攻時) 7. 7mm旋回機銃3挺(前上方・後ろ上方・後ろ下方) 7. 7mm旋回機銃3挺(胴体中央部上方・側方) 20mm旋回機銃1挺(胴体後部上面) 乗員 5名 7名 輸送機型 [ ] (昭和14年)に九六式陸攻二一型を元に燃料・滑油タンクの増設と武装の削減、機内に8~10人分の座席を備える客室設置などの改造を行った機体を、海軍では 九六式陸上輸送機として採用、同様の改造は一一型に対しても実施され、後年には落下傘部隊用の特殊輸送機へ改造したものも登場した。 九六式陸上輸送機は民間でも 三菱式双発輸送機としてや各新聞社で輸送や連絡に用いられた。 これらの中には世界一周飛行を行ったニッポン号など、日本から各国への長距離飛行に供されたものがあった。 九六式陸上輸送機一一型(L3Y1) 九六式陸上攻撃機一一型、同二一型から改造。 発動機は金星四二型ないし四五型を標準とした。 九六式陸上輸送機二一型(L3Y2) 客室内部を落下傘部隊用に改造、胴体下面には装備品の梱包を搭載可能とした機体。 三菱式双発輸送機 武装を全廃、軍用型から一部の艤装を変更して乗客定員4~8人の旅客機、もしくは貨物輸送機としたもの。 長距離飛行を行った三菱式双発輸送機の例としては以下のようなものがあった。 ニッポン号(J-BACI) 詳細は「」を参照 海軍から払い下げられた二一型を改造の上、(昭和14年)8月~10月に主催で国産航空機による初の世界一周飛行(総飛行距離5万2886km、実飛行時間194時間)を行った。 そよかぜ号(J-BEOA) 1939年(昭和14年)4月にで行われた皇太子と王女の結婚式に際し、日本からの慶祝使節を乗せた往復親善飛行を同年4月9日~4月15日(往路)、5月15日~5月27日(復路)にかけて行い、イラン滞在中には4月25日に上空での空中分列式に参加、またや方面への親善や航路開拓を目的とした追加飛行も検討されたがこれらは実現せず終わった。 脚注 [ ] [] 注釈 [ ]• 杉田親美『三菱海軍戦闘機設計の真実 : 曽根嘉年技師の秘蔵レポート』国書刊行会、2019年。。 p83—85• 『日本航空機一〇〇選』、P145-146• 『世界の傑作機 No. 91 九六式陸上攻撃機』、P17、P32-33 参考文献 [ ]• 『日本航空機一〇〇選』(野沢正著、秋田書店、1972年)• 『日本航空機総集 三菱編』(出版共同社、1981年 改訂新版)• 『世界の傑作機 No. 91 九六式陸上攻撃機』(文林堂、2002年)• Ref. A06031065600「写真週報61号」 1939年4月19日)「そよかぜはイランへ」• Ref. B10074779000 標題:7.日本、「イラン」親善飛行ニ関スル件(そよかぜ号)/分割1• Ref. B10074779100 標題:7.日本、「イラン」親善飛行ニ関スル件(そよかぜ号)/分割2 関連項目 [ ]• 基地内に中攻隊の記念碑がある。

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