おば みつ twitter。 【鬼滅の刃】伊黒小芭内(蛇柱)がかっこいい!甘露寺蜜璃との恋愛(おばみつ)や炭治郎との関係は?蛇の呼吸の技や名言や素顔・過去まとめ!(ネタバレ注意)

#おばみつ #鬼滅の刃小説500users入り 甘露寺蜜璃のおつかい事変

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「まぁまぁ困ったわぁ!」 そうとは思えない伸びやかな声が街の一角に響いた。 胡蝶しのぶは聞き覚えのある声に「あれ?」と買い出し途中の足をとめる。 周りをぐるりと見渡せば、桜餅のような髪色を三つ編みにした女性の後ろ姿があるではないか。 「やっぱり蜜璃さんじゃないですか。 どうしてこんな薬屋通りに?」 「あ〜! しのぶちゃんだわ! お休みの日に偶然会えるなんてとっても嬉しい! 素敵ね!」 ギュウとしのぶは蜜璃に抱きしめられ、はちきれんばかりの豊かな胸が押し付けられる。 薄緑の毛先に桃色の奇抜な髪色を持つこの女性は鬼殺隊の恋柱の甘露寺蜜璃という。 なんでも昔は黒髪だったらしいが、大食漢な彼女が桜餅を何日も食べ続けた為に髪が変色したと、眉唾には信じがたいエピソードをもっている奇特な方である。 そんな彼女、今日は黒い隊服を脱ぎどこにでもいる可愛らしい女学生といった服装であった。 桃色の髪も高い位置で結われ、赤色の大きなリボンが座している。 その蜜璃は嬉しそうに頬を染め「素敵!素敵だわ!」と私との会合を心から喜んでいる様子だ。 膨よかな胸に埋もれるしのぶは小さく苦笑を浮かべた。 しのぶの問いかけた質問は右から左へと流されてしまったようだ。 「先ほど何か悩まれている声が聞こえましたが、なにかここで探し物でも?」 「あっごめんなさい!わたしすっかり舞い上がっちゃって……。 」 「いいえ気にしないでください。 休みが合うことは珍しいですしね。 」 「そうよね〜! しのぶちゃんとたくさんお話したいけど、こればっかりは贅沢言ってられないものね。 あッ!そういえばね! この先に美味しいお店を見つけたのよ! なんでもふわふわの洋菓子が美味しいらしくてね……」 おっとまた話が脱線してきた。 しのぶがコホンと咳をすれば、蜜璃はまたやっちゃったわ!と両手を広げ顔を真っ赤にする。 「ご、ごめんなさいしのぶちゃん!私ったらついつい話をおかしくさせちゃって……。 そうそう! ここにきた理由よね! それはね、私がおつかいを頼まれたからです!! 」 どーん。 えっへんと腰に手を添え、蜜璃は何故か自慢げだ。 一方、しのぶは大きな黒目をぱちぱちと瞬くとすぐにその表情を曇らせた。 「おつかい…ですか?柱である蜜璃さんに?」 「あっ違うのよ!鬼殺隊とは関わりない人だから!」 眉をひそめたしのぶに蜜璃は両手を広げ慌てて否定する。 柱を足にするなんて階級の乱れに繋がりかねない御法度である。 今回は違ったものの、蜜璃さんならひょいひょいと言葉に乗せられてしまいそうだ。 優しい彼女に甘える隊員が今後現れるかもしれない。 (……あぁ、でも彼が許さないか。 ) しのぶの脳裏にネチネチと粘着質……いや、注意深く慎重な男の顔が浮かぶ。 彼が同じ柱である甘露寺蜜璃を特別気にかけているのは周知の事実だ。 その彼にそれとなく話してみようか。 多少暴走するかもしれないが、抑止には最適だろう。 「しのぶちゃん? 突然考え込んだみたいだけど大丈夫かしら? 」 ハッと意識を戻しあわてて謝れば、蜜璃に「いいのよ気にしないでー」と気遣われた。 失態に頬の熱を高めたしのぶはコホンと咳をしなおす。 「それで…おつかい?でしたよね。 」 「そうよ!! でもコレは食べ物ではないみたいだし、とりあえずここに売ってるって言われてきたのだけど、でもお店がたくさんありすぎて迷ってしまったの。 」 がっくりと蜜璃は肩を落としている。 喋るたびに表情がコロコロと変わりとても表現豊かだ。 しのぶはふむと顎に手を添える。 おおよその事情は分かった。 蜜璃さんは誰かしらから買い出しを頼まれたが、買う場所も肝心の物すら把握できていないのだ。 おかしな頼まれごとだ、効率が悪すぎる。 「どういった品目なんですか? よろしければお手伝いします。 」 「えっ!!ほんと…アッ!でも…………う……ごめんなさい!!ひとりで探してきてほしいって頼まれてるのよ。 」 だからごめんなさい。 そう心底申し訳ないと言ったように更に蜜璃は肩を落とした。 おや、少しキナ臭くなってきた。 しのぶは可憐だといわれる笑顔を引っ込め細い眉をたらりと下げるとため息を吐いた。 「そうですか……お手伝いできないのは残念です。 」 「うっ…ごめんなさい。 ほんとは、ほんとはとっても手伝ってほしいのだけど……」 「いいえお気になさらないでください。 ……ところで、その頼まれたお方はどなたなんですか?」 「え? えっとねぇ、三つ先角を曲がったところにある大きな商家の息子さんよ。 少し前に甘味処で知り合ったの。 」 あそこの息子といえば、色魔のボンクラ息子として有名ではないか。 嫌な話の流れにしのぶは目線を鋭いものとさせる。 蜜璃は続いて語った。 「それでね、今日たまたま街で会ったらお困りになっているようでね、この品物どうか買ってきてほしいって頼まれちゃって。 突然だったから驚いちゃったけど、困っている人は助けないとね!!」 この品物と言う蜜璃の手には一枚の紙片がある。 見せてほしいと言ったところで蜜璃を困らせるだけだ。 どうにかして見れないものか。 そんなしのぶの思いが伝わったのか、突然強い突風が辺りに吹き荒れた。 蜜璃の細い指で摘んでいた紙片が風に煽られ飛ばされてゆく。 「あったいへんだわ!紙が!!」 このまま無くなったのを理由にどうにか蜜理を言いくるめておつかいを断念させようか。 だが紙の飛んで行った方向に蛇のようにネチッこい人を見つけ、これは運が良いとしのぶはにっこり笑った。 いつもは屋敷近くにいる虫や鼠を食べているのだが、前回の任務で彼も傷を負ってしまい。 その詫びとして少し高めの餌を買いに来たのだ。 予想以上に良いものが手に入って伊黒はご機嫌だった。 勿論表情には一切出ていない。 これはアイツも満足するだろう、そう鏑丸の待つ屋敷へと足を進めようとした。 その時突如突風が吹いた。 ビュウウと大きな風の音にのって伊黒の顔に小さなものが飛んできた。 流石の反射神経でそれを受け止める。 ぐしゃり、片手に潰してしまったそれはなにやら文字が書かれた小さな用紙だ。 「きゃ〜〜!すみません!!それ私のもので……ってアラァ!伊黒さん!」 「……!か、甘露寺!!」 目に毒な大きな胸を揺らし現れた彼女は、見慣れた隊服姿ではなく、見慣れない私服姿を身に纏っている。 いつものおさげは頭頂で纏められているのか、首筋はスッキリとしており甘露寺の愛らしさを強調させる赤い髪留めが鎮座していた。 なるほどこういうものも好きなのか。 そして、その少し背後には薬屋の紙袋を抱えた蟲柱胡蝶しのぶが涼しい顔で立っていた。 「…と胡蝶もいたか。 」 「うふふ私はついでですか?」 含みのある言葉に眉をひそめる。 だが蜜璃からぎゅっとその手を握られれば、あっという間にしのぶの存在は彼方に消える。 「あーん伊黒さん!素敵!ありがとう拾ってくださって!」 「……あぁ。 甘露寺のものだったのか。 それは良かった。 」 「それ、竹田屋の息子さんから渡された用紙ですものね。 無くならなくて良かったです。 」 竹田屋とは色魔のボンクラ息子の商店である。 スキンシップに気張っている彼にしのぶがそう言えば、メモを返そうとした伊黒の動きが止まった。 「……あの噂の商店の息子か。 」 「? うわさ?」 首をひねる甘露寺の背後からしのぶが答える。 「ええ、そうらしいです。 なんでも偶然会ってわざわざ蜜璃さんにお声かけされたようで。 」 「偶然、わざわざと。 ……なるほど理解した。 」 「え、えっと何のお話かしら?」 オロオロとしのぶと伊黒の顔を交互に見る蜜璃に、しのぶは名案だとばかりに手をポンと叩いた。 「そうです、伊黒さんに頼まれごとをお手伝いしてもらうのはどうですか?」 「え、でも私一人で買ってきてって頼まれているのよ?」 「それはきっと気恥ずかしいからですよ、蜜璃さんが頼るのは女性だと思ったのでしょう。 同じ男性である伊黒さんならなにも問題はないですよ。 」 つらつらと述べてゆけば蜜璃は困った顔で「そうなのかしら…?」と唸る。 腕を組んで思案している蜜璃を横目にメモを持っている伊黒に目線を送る。 そうすれば伊黒は蜜璃が頑なに内緒にしていたメモを開封した。 うんうんと唸っている蜜璃をいいことにしのぶもそれを覗き込む。 そこには綺麗とは言い難い乱雑な筆跡で、いわゆるマニアックな性具の名称が記されていた。 「うわ……。 」 「…………。 」 思わずといった様子でしのぶから声が漏れた。 ビリィッと伊黒の手のひらの中で紙が細切れになる。 紙の断裂音にさすがの蜜璃も目をまんまると開き啞然とした。 「えっえっ!紙が?えっどうしたの伊黒さん!?」 「あら蜜璃さん。 伊黒さんが代わりに行ってくださるようですよ。 」 「そ、そうなの? でもわたしが頼まれたから最後まで……」 「いや、これは俺の方が良いだろう。 悪いな甘露寺、奪ってしまう形になって。 」 「え! そんな!! じゃあお願いしようかしら…???」 伊黒の常にない強引な物言いに蜜璃はたじろいだ様子だったが、首を傾げている間にあっという間に話がついた。 しのぶは伊黒の背から滲み出る怒りを視界の端にフゥと息を吐いた。 とんでもない輩がいたものだ。 女性に対する酷い侮辱で、嫌がらせである。 なまじ豪家の息子であるから周りも止められらずやりたい放題なのだろう。 蜜璃がこの手に関しておぼこくて良かったものだ。 しのぶと伊黒が各々の静かな怒りに身を焦がしていると、蜜璃は「あぁ!これも伝えないとね!」と突然叫んだ。 「あとね!こちらの品物を買ったらご自宅まで運んできてほしいって言われてるの。 」 どうしてかしらね?人差し指を唇に添え蜜璃は可愛らしく首を傾げる。 しのぶは思わず白目になりかけた。 ズキズキと痛む頭に眉間を抑える。 なるほど男はそのままパクリと蜜璃を頂くつもりだったらしい。 正に鴨がネギを背負ってくるというわけだ。 うまく言いくるめられる蜜璃も蜜璃である。 危機管理がなってないに過ぎる。 いつか場を作ってしっかりと説かねばなない……いちおうカナヲにもしておこうか。 「……ほぉ…。 」 (これはフォローのしようがないです……。 ) 伊黒から漏れ出る感情がピリピリと肌を粟立たせた。 流石は柱である抑えられてもその殺気は一級品だ。 周囲の空気が徐々に重くなっていく。 ほんとうにこの伊黒さんにこの件を任せていいのだろうか心配になってきた、主に男の安否が。 一方、蜜璃は肝が座っているのか抜けているのか。 伊黒の殺気をものともせずに「でも流石に殿方の家に一人で行くのはふしだらよねぇ」と呑気に独り言を言っている。 鬼滅隊が守るべき一般人を傷つけるなんて本末転倒である。 この場合、しのぶは隊員として伊黒に「落ち着いてください」と釘を刺さなければいけない。 けれど、これは、立派な変態行為。 個人的には報復、万々歳だ。 しのぶは甘露寺蜜璃の友としてにっこり笑みを伊黒に向けた。 「伊黒さん、患者は蝶屋敷に連れてきてくださいね。 」 「……あぁ了承した。 」 苛立ち気にこちらを見た伊黒は、胡蝶の背中を押す台詞に驚いたようだったが、直ぐに目に爛々と光らせ怒りの表情に戻った。 要は結果として怪我人を出さなければいいのだ。 結果良ければ全て良し。 ボロボロになった男をどう治療してやろうか、しのぶはとびっきりの笑顔を浮かべた。 蛇と蟲が密かに共同戦線を張っていたところ、そんなことをつゆも知らない蜜璃はくるりと振り向いた。 「ところでその品物っていったい何だったの?」 ゲフゥッと激しく隣の男が咳き込んだ。 あらあらとしのぶは頬に手を添える。 爆弾を放った蜜璃は私何か変なこと言ったかしら?といった表情で大きな目をパチパチと瞬いていた。 こちらに「どうにかしろ!」との視線が刺さるが、それを黙殺しコテンと首を傾げた。 「さあ私もさっぱり…なんでしょうね?」 素知らぬふりをしたのは、淑女がいかがわしいものを知っているのが恥ずかしいからだ、決して面白そうだからではない、決して。 伊黒の怒りがしのぶに突き刺さるがすぐに霧散した。 蜜璃が伊黒に曇りない目を向けたのだ。 真っ直ぐな愛しい娘の眼差しに伊黒はタジタジである。 戦闘中でも聞かなさそうなグゥと情けないうめき声をあげている。 「伊黒さん?」 愛らしい蜜璃の顔が伊黒に近づく。 視界の暴力に言葉を詰まらせていた伊黒は限界だと言わんばかりに声を張り上げた。 「……甘露寺はまだ知らなくていい…いや一生知らなくていい…っ!!」 「い、一生ぉ!?」 顔を隠し真っ赤な耳で叫ぶ伊黒と、ガーンとショックを受けて青ざめる蜜璃。 そんなふたりを見て「あはは」と無意識にしのぶは笑っていた。 後日、運悪く包帯大けがを負ったという一般人を伊黒が蝶屋敷に保護してきたそうだ。

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【鬼滅の刃】甘露寺と伊黒っぽく白日歌ってみた【King Gnu】

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「まぁまぁ困ったわぁ!」 そうとは思えない伸びやかな声が街の一角に響いた。 胡蝶しのぶは聞き覚えのある声に「あれ?」と買い出し途中の足をとめる。 周りをぐるりと見渡せば、桜餅のような髪色を三つ編みにした女性の後ろ姿があるではないか。 「やっぱり蜜璃さんじゃないですか。 どうしてこんな薬屋通りに?」 「あ〜! しのぶちゃんだわ! お休みの日に偶然会えるなんてとっても嬉しい! 素敵ね!」 ギュウとしのぶは蜜璃に抱きしめられ、はちきれんばかりの豊かな胸が押し付けられる。 薄緑の毛先に桃色の奇抜な髪色を持つこの女性は鬼殺隊の恋柱の甘露寺蜜璃という。 なんでも昔は黒髪だったらしいが、大食漢な彼女が桜餅を何日も食べ続けた為に髪が変色したと、眉唾には信じがたいエピソードをもっている奇特な方である。 そんな彼女、今日は黒い隊服を脱ぎどこにでもいる可愛らしい女学生といった服装であった。 桃色の髪も高い位置で結われ、赤色の大きなリボンが座している。 その蜜璃は嬉しそうに頬を染め「素敵!素敵だわ!」と私との会合を心から喜んでいる様子だ。 膨よかな胸に埋もれるしのぶは小さく苦笑を浮かべた。 しのぶの問いかけた質問は右から左へと流されてしまったようだ。 「先ほど何か悩まれている声が聞こえましたが、なにかここで探し物でも?」 「あっごめんなさい!わたしすっかり舞い上がっちゃって……。 」 「いいえ気にしないでください。 休みが合うことは珍しいですしね。 」 「そうよね〜! しのぶちゃんとたくさんお話したいけど、こればっかりは贅沢言ってられないものね。 あッ!そういえばね! この先に美味しいお店を見つけたのよ! なんでもふわふわの洋菓子が美味しいらしくてね……」 おっとまた話が脱線してきた。 しのぶがコホンと咳をすれば、蜜璃はまたやっちゃったわ!と両手を広げ顔を真っ赤にする。 「ご、ごめんなさいしのぶちゃん!私ったらついつい話をおかしくさせちゃって……。 そうそう! ここにきた理由よね! それはね、私がおつかいを頼まれたからです!! 」 どーん。 えっへんと腰に手を添え、蜜璃は何故か自慢げだ。 一方、しのぶは大きな黒目をぱちぱちと瞬くとすぐにその表情を曇らせた。 「おつかい…ですか?柱である蜜璃さんに?」 「あっ違うのよ!鬼殺隊とは関わりない人だから!」 眉をひそめたしのぶに蜜璃は両手を広げ慌てて否定する。 柱を足にするなんて階級の乱れに繋がりかねない御法度である。 今回は違ったものの、蜜璃さんならひょいひょいと言葉に乗せられてしまいそうだ。 優しい彼女に甘える隊員が今後現れるかもしれない。 (……あぁ、でも彼が許さないか。 ) しのぶの脳裏にネチネチと粘着質……いや、注意深く慎重な男の顔が浮かぶ。 彼が同じ柱である甘露寺蜜璃を特別気にかけているのは周知の事実だ。 その彼にそれとなく話してみようか。 多少暴走するかもしれないが、抑止には最適だろう。 「しのぶちゃん? 突然考え込んだみたいだけど大丈夫かしら? 」 ハッと意識を戻しあわてて謝れば、蜜璃に「いいのよ気にしないでー」と気遣われた。 失態に頬の熱を高めたしのぶはコホンと咳をしなおす。 「それで…おつかい?でしたよね。 」 「そうよ!! でもコレは食べ物ではないみたいだし、とりあえずここに売ってるって言われてきたのだけど、でもお店がたくさんありすぎて迷ってしまったの。 」 がっくりと蜜璃は肩を落としている。 喋るたびに表情がコロコロと変わりとても表現豊かだ。 しのぶはふむと顎に手を添える。 おおよその事情は分かった。 蜜璃さんは誰かしらから買い出しを頼まれたが、買う場所も肝心の物すら把握できていないのだ。 おかしな頼まれごとだ、効率が悪すぎる。 「どういった品目なんですか? よろしければお手伝いします。 」 「えっ!!ほんと…アッ!でも…………う……ごめんなさい!!ひとりで探してきてほしいって頼まれてるのよ。 」 だからごめんなさい。 そう心底申し訳ないと言ったように更に蜜璃は肩を落とした。 おや、少しキナ臭くなってきた。 しのぶは可憐だといわれる笑顔を引っ込め細い眉をたらりと下げるとため息を吐いた。 「そうですか……お手伝いできないのは残念です。 」 「うっ…ごめんなさい。 ほんとは、ほんとはとっても手伝ってほしいのだけど……」 「いいえお気になさらないでください。 ……ところで、その頼まれたお方はどなたなんですか?」 「え? えっとねぇ、三つ先角を曲がったところにある大きな商家の息子さんよ。 少し前に甘味処で知り合ったの。 」 あそこの息子といえば、色魔のボンクラ息子として有名ではないか。 嫌な話の流れにしのぶは目線を鋭いものとさせる。 蜜璃は続いて語った。 「それでね、今日たまたま街で会ったらお困りになっているようでね、この品物どうか買ってきてほしいって頼まれちゃって。 突然だったから驚いちゃったけど、困っている人は助けないとね!!」 この品物と言う蜜璃の手には一枚の紙片がある。 見せてほしいと言ったところで蜜璃を困らせるだけだ。 どうにかして見れないものか。 そんなしのぶの思いが伝わったのか、突然強い突風が辺りに吹き荒れた。 蜜璃の細い指で摘んでいた紙片が風に煽られ飛ばされてゆく。 「あったいへんだわ!紙が!!」 このまま無くなったのを理由にどうにか蜜理を言いくるめておつかいを断念させようか。 だが紙の飛んで行った方向に蛇のようにネチッこい人を見つけ、これは運が良いとしのぶはにっこり笑った。 いつもは屋敷近くにいる虫や鼠を食べているのだが、前回の任務で彼も傷を負ってしまい。 その詫びとして少し高めの餌を買いに来たのだ。 予想以上に良いものが手に入って伊黒はご機嫌だった。 勿論表情には一切出ていない。 これはアイツも満足するだろう、そう鏑丸の待つ屋敷へと足を進めようとした。 その時突如突風が吹いた。 ビュウウと大きな風の音にのって伊黒の顔に小さなものが飛んできた。 流石の反射神経でそれを受け止める。 ぐしゃり、片手に潰してしまったそれはなにやら文字が書かれた小さな用紙だ。 「きゃ〜〜!すみません!!それ私のもので……ってアラァ!伊黒さん!」 「……!か、甘露寺!!」 目に毒な大きな胸を揺らし現れた彼女は、見慣れた隊服姿ではなく、見慣れない私服姿を身に纏っている。 いつものおさげは頭頂で纏められているのか、首筋はスッキリとしており甘露寺の愛らしさを強調させる赤い髪留めが鎮座していた。 なるほどこういうものも好きなのか。 そして、その少し背後には薬屋の紙袋を抱えた蟲柱胡蝶しのぶが涼しい顔で立っていた。 「…と胡蝶もいたか。 」 「うふふ私はついでですか?」 含みのある言葉に眉をひそめる。 だが蜜璃からぎゅっとその手を握られれば、あっという間にしのぶの存在は彼方に消える。 「あーん伊黒さん!素敵!ありがとう拾ってくださって!」 「……あぁ。 甘露寺のものだったのか。 それは良かった。 」 「それ、竹田屋の息子さんから渡された用紙ですものね。 無くならなくて良かったです。 」 竹田屋とは色魔のボンクラ息子の商店である。 スキンシップに気張っている彼にしのぶがそう言えば、メモを返そうとした伊黒の動きが止まった。 「……あの噂の商店の息子か。 」 「? うわさ?」 首をひねる甘露寺の背後からしのぶが答える。 「ええ、そうらしいです。 なんでも偶然会ってわざわざ蜜璃さんにお声かけされたようで。 」 「偶然、わざわざと。 ……なるほど理解した。 」 「え、えっと何のお話かしら?」 オロオロとしのぶと伊黒の顔を交互に見る蜜璃に、しのぶは名案だとばかりに手をポンと叩いた。 「そうです、伊黒さんに頼まれごとをお手伝いしてもらうのはどうですか?」 「え、でも私一人で買ってきてって頼まれているのよ?」 「それはきっと気恥ずかしいからですよ、蜜璃さんが頼るのは女性だと思ったのでしょう。 同じ男性である伊黒さんならなにも問題はないですよ。 」 つらつらと述べてゆけば蜜璃は困った顔で「そうなのかしら…?」と唸る。 腕を組んで思案している蜜璃を横目にメモを持っている伊黒に目線を送る。 そうすれば伊黒は蜜璃が頑なに内緒にしていたメモを開封した。 うんうんと唸っている蜜璃をいいことにしのぶもそれを覗き込む。 そこには綺麗とは言い難い乱雑な筆跡で、いわゆるマニアックな性具の名称が記されていた。 「うわ……。 」 「…………。 」 思わずといった様子でしのぶから声が漏れた。 ビリィッと伊黒の手のひらの中で紙が細切れになる。 紙の断裂音にさすがの蜜璃も目をまんまると開き啞然とした。 「えっえっ!紙が?えっどうしたの伊黒さん!?」 「あら蜜璃さん。 伊黒さんが代わりに行ってくださるようですよ。 」 「そ、そうなの? でもわたしが頼まれたから最後まで……」 「いや、これは俺の方が良いだろう。 悪いな甘露寺、奪ってしまう形になって。 」 「え! そんな!! じゃあお願いしようかしら…???」 伊黒の常にない強引な物言いに蜜璃はたじろいだ様子だったが、首を傾げている間にあっという間に話がついた。 しのぶは伊黒の背から滲み出る怒りを視界の端にフゥと息を吐いた。 とんでもない輩がいたものだ。 女性に対する酷い侮辱で、嫌がらせである。 なまじ豪家の息子であるから周りも止められらずやりたい放題なのだろう。 蜜璃がこの手に関しておぼこくて良かったものだ。 しのぶと伊黒が各々の静かな怒りに身を焦がしていると、蜜璃は「あぁ!これも伝えないとね!」と突然叫んだ。 「あとね!こちらの品物を買ったらご自宅まで運んできてほしいって言われてるの。 」 どうしてかしらね?人差し指を唇に添え蜜璃は可愛らしく首を傾げる。 しのぶは思わず白目になりかけた。 ズキズキと痛む頭に眉間を抑える。 なるほど男はそのままパクリと蜜璃を頂くつもりだったらしい。 正に鴨がネギを背負ってくるというわけだ。 うまく言いくるめられる蜜璃も蜜璃である。 危機管理がなってないに過ぎる。 いつか場を作ってしっかりと説かねばなない……いちおうカナヲにもしておこうか。 「……ほぉ…。 」 (これはフォローのしようがないです……。 ) 伊黒から漏れ出る感情がピリピリと肌を粟立たせた。 流石は柱である抑えられてもその殺気は一級品だ。 周囲の空気が徐々に重くなっていく。 ほんとうにこの伊黒さんにこの件を任せていいのだろうか心配になってきた、主に男の安否が。 一方、蜜璃は肝が座っているのか抜けているのか。 伊黒の殺気をものともせずに「でも流石に殿方の家に一人で行くのはふしだらよねぇ」と呑気に独り言を言っている。 鬼滅隊が守るべき一般人を傷つけるなんて本末転倒である。 この場合、しのぶは隊員として伊黒に「落ち着いてください」と釘を刺さなければいけない。 けれど、これは、立派な変態行為。 個人的には報復、万々歳だ。 しのぶは甘露寺蜜璃の友としてにっこり笑みを伊黒に向けた。 「伊黒さん、患者は蝶屋敷に連れてきてくださいね。 」 「……あぁ了承した。 」 苛立ち気にこちらを見た伊黒は、胡蝶の背中を押す台詞に驚いたようだったが、直ぐに目に爛々と光らせ怒りの表情に戻った。 要は結果として怪我人を出さなければいいのだ。 結果良ければ全て良し。 ボロボロになった男をどう治療してやろうか、しのぶはとびっきりの笑顔を浮かべた。 蛇と蟲が密かに共同戦線を張っていたところ、そんなことをつゆも知らない蜜璃はくるりと振り向いた。 「ところでその品物っていったい何だったの?」 ゲフゥッと激しく隣の男が咳き込んだ。 あらあらとしのぶは頬に手を添える。 爆弾を放った蜜璃は私何か変なこと言ったかしら?といった表情で大きな目をパチパチと瞬いていた。 こちらに「どうにかしろ!」との視線が刺さるが、それを黙殺しコテンと首を傾げた。 「さあ私もさっぱり…なんでしょうね?」 素知らぬふりをしたのは、淑女がいかがわしいものを知っているのが恥ずかしいからだ、決して面白そうだからではない、決して。 伊黒の怒りがしのぶに突き刺さるがすぐに霧散した。 蜜璃が伊黒に曇りない目を向けたのだ。 真っ直ぐな愛しい娘の眼差しに伊黒はタジタジである。 戦闘中でも聞かなさそうなグゥと情けないうめき声をあげている。 「伊黒さん?」 愛らしい蜜璃の顔が伊黒に近づく。 視界の暴力に言葉を詰まらせていた伊黒は限界だと言わんばかりに声を張り上げた。 「……甘露寺はまだ知らなくていい…いや一生知らなくていい…っ!!」 「い、一生ぉ!?」 顔を隠し真っ赤な耳で叫ぶ伊黒と、ガーンとショックを受けて青ざめる蜜璃。 そんなふたりを見て「あはは」と無意識にしのぶは笑っていた。 後日、運悪く包帯大けがを負ったという一般人を伊黒が蝶屋敷に保護してきたそうだ。

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#おばみつ Twitter ssまとめ

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「まぁまぁ困ったわぁ!」 そうとは思えない伸びやかな声が街の一角に響いた。 胡蝶しのぶは聞き覚えのある声に「あれ?」と買い出し途中の足をとめる。 周りをぐるりと見渡せば、桜餅のような髪色を三つ編みにした女性の後ろ姿があるではないか。 「やっぱり蜜璃さんじゃないですか。 どうしてこんな薬屋通りに?」 「あ〜! しのぶちゃんだわ! お休みの日に偶然会えるなんてとっても嬉しい! 素敵ね!」 ギュウとしのぶは蜜璃に抱きしめられ、はちきれんばかりの豊かな胸が押し付けられる。 薄緑の毛先に桃色の奇抜な髪色を持つこの女性は鬼殺隊の恋柱の甘露寺蜜璃という。 なんでも昔は黒髪だったらしいが、大食漢な彼女が桜餅を何日も食べ続けた為に髪が変色したと、眉唾には信じがたいエピソードをもっている奇特な方である。 そんな彼女、今日は黒い隊服を脱ぎどこにでもいる可愛らしい女学生といった服装であった。 桃色の髪も高い位置で結われ、赤色の大きなリボンが座している。 その蜜璃は嬉しそうに頬を染め「素敵!素敵だわ!」と私との会合を心から喜んでいる様子だ。 膨よかな胸に埋もれるしのぶは小さく苦笑を浮かべた。 しのぶの問いかけた質問は右から左へと流されてしまったようだ。 「先ほど何か悩まれている声が聞こえましたが、なにかここで探し物でも?」 「あっごめんなさい!わたしすっかり舞い上がっちゃって……。 」 「いいえ気にしないでください。 休みが合うことは珍しいですしね。 」 「そうよね〜! しのぶちゃんとたくさんお話したいけど、こればっかりは贅沢言ってられないものね。 あッ!そういえばね! この先に美味しいお店を見つけたのよ! なんでもふわふわの洋菓子が美味しいらしくてね……」 おっとまた話が脱線してきた。 しのぶがコホンと咳をすれば、蜜璃はまたやっちゃったわ!と両手を広げ顔を真っ赤にする。 「ご、ごめんなさいしのぶちゃん!私ったらついつい話をおかしくさせちゃって……。 そうそう! ここにきた理由よね! それはね、私がおつかいを頼まれたからです!! 」 どーん。 えっへんと腰に手を添え、蜜璃は何故か自慢げだ。 一方、しのぶは大きな黒目をぱちぱちと瞬くとすぐにその表情を曇らせた。 「おつかい…ですか?柱である蜜璃さんに?」 「あっ違うのよ!鬼殺隊とは関わりない人だから!」 眉をひそめたしのぶに蜜璃は両手を広げ慌てて否定する。 柱を足にするなんて階級の乱れに繋がりかねない御法度である。 今回は違ったものの、蜜璃さんならひょいひょいと言葉に乗せられてしまいそうだ。 優しい彼女に甘える隊員が今後現れるかもしれない。 (……あぁ、でも彼が許さないか。 ) しのぶの脳裏にネチネチと粘着質……いや、注意深く慎重な男の顔が浮かぶ。 彼が同じ柱である甘露寺蜜璃を特別気にかけているのは周知の事実だ。 その彼にそれとなく話してみようか。 多少暴走するかもしれないが、抑止には最適だろう。 「しのぶちゃん? 突然考え込んだみたいだけど大丈夫かしら? 」 ハッと意識を戻しあわてて謝れば、蜜璃に「いいのよ気にしないでー」と気遣われた。 失態に頬の熱を高めたしのぶはコホンと咳をしなおす。 「それで…おつかい?でしたよね。 」 「そうよ!! でもコレは食べ物ではないみたいだし、とりあえずここに売ってるって言われてきたのだけど、でもお店がたくさんありすぎて迷ってしまったの。 」 がっくりと蜜璃は肩を落としている。 喋るたびに表情がコロコロと変わりとても表現豊かだ。 しのぶはふむと顎に手を添える。 おおよその事情は分かった。 蜜璃さんは誰かしらから買い出しを頼まれたが、買う場所も肝心の物すら把握できていないのだ。 おかしな頼まれごとだ、効率が悪すぎる。 「どういった品目なんですか? よろしければお手伝いします。 」 「えっ!!ほんと…アッ!でも…………う……ごめんなさい!!ひとりで探してきてほしいって頼まれてるのよ。 」 だからごめんなさい。 そう心底申し訳ないと言ったように更に蜜璃は肩を落とした。 おや、少しキナ臭くなってきた。 しのぶは可憐だといわれる笑顔を引っ込め細い眉をたらりと下げるとため息を吐いた。 「そうですか……お手伝いできないのは残念です。 」 「うっ…ごめんなさい。 ほんとは、ほんとはとっても手伝ってほしいのだけど……」 「いいえお気になさらないでください。 ……ところで、その頼まれたお方はどなたなんですか?」 「え? えっとねぇ、三つ先角を曲がったところにある大きな商家の息子さんよ。 少し前に甘味処で知り合ったの。 」 あそこの息子といえば、色魔のボンクラ息子として有名ではないか。 嫌な話の流れにしのぶは目線を鋭いものとさせる。 蜜璃は続いて語った。 「それでね、今日たまたま街で会ったらお困りになっているようでね、この品物どうか買ってきてほしいって頼まれちゃって。 突然だったから驚いちゃったけど、困っている人は助けないとね!!」 この品物と言う蜜璃の手には一枚の紙片がある。 見せてほしいと言ったところで蜜璃を困らせるだけだ。 どうにかして見れないものか。 そんなしのぶの思いが伝わったのか、突然強い突風が辺りに吹き荒れた。 蜜璃の細い指で摘んでいた紙片が風に煽られ飛ばされてゆく。 「あったいへんだわ!紙が!!」 このまま無くなったのを理由にどうにか蜜理を言いくるめておつかいを断念させようか。 だが紙の飛んで行った方向に蛇のようにネチッこい人を見つけ、これは運が良いとしのぶはにっこり笑った。 いつもは屋敷近くにいる虫や鼠を食べているのだが、前回の任務で彼も傷を負ってしまい。 その詫びとして少し高めの餌を買いに来たのだ。 予想以上に良いものが手に入って伊黒はご機嫌だった。 勿論表情には一切出ていない。 これはアイツも満足するだろう、そう鏑丸の待つ屋敷へと足を進めようとした。 その時突如突風が吹いた。 ビュウウと大きな風の音にのって伊黒の顔に小さなものが飛んできた。 流石の反射神経でそれを受け止める。 ぐしゃり、片手に潰してしまったそれはなにやら文字が書かれた小さな用紙だ。 「きゃ〜〜!すみません!!それ私のもので……ってアラァ!伊黒さん!」 「……!か、甘露寺!!」 目に毒な大きな胸を揺らし現れた彼女は、見慣れた隊服姿ではなく、見慣れない私服姿を身に纏っている。 いつものおさげは頭頂で纏められているのか、首筋はスッキリとしており甘露寺の愛らしさを強調させる赤い髪留めが鎮座していた。 なるほどこういうものも好きなのか。 そして、その少し背後には薬屋の紙袋を抱えた蟲柱胡蝶しのぶが涼しい顔で立っていた。 「…と胡蝶もいたか。 」 「うふふ私はついでですか?」 含みのある言葉に眉をひそめる。 だが蜜璃からぎゅっとその手を握られれば、あっという間にしのぶの存在は彼方に消える。 「あーん伊黒さん!素敵!ありがとう拾ってくださって!」 「……あぁ。 甘露寺のものだったのか。 それは良かった。 」 「それ、竹田屋の息子さんから渡された用紙ですものね。 無くならなくて良かったです。 」 竹田屋とは色魔のボンクラ息子の商店である。 スキンシップに気張っている彼にしのぶがそう言えば、メモを返そうとした伊黒の動きが止まった。 「……あの噂の商店の息子か。 」 「? うわさ?」 首をひねる甘露寺の背後からしのぶが答える。 「ええ、そうらしいです。 なんでも偶然会ってわざわざ蜜璃さんにお声かけされたようで。 」 「偶然、わざわざと。 ……なるほど理解した。 」 「え、えっと何のお話かしら?」 オロオロとしのぶと伊黒の顔を交互に見る蜜璃に、しのぶは名案だとばかりに手をポンと叩いた。 「そうです、伊黒さんに頼まれごとをお手伝いしてもらうのはどうですか?」 「え、でも私一人で買ってきてって頼まれているのよ?」 「それはきっと気恥ずかしいからですよ、蜜璃さんが頼るのは女性だと思ったのでしょう。 同じ男性である伊黒さんならなにも問題はないですよ。 」 つらつらと述べてゆけば蜜璃は困った顔で「そうなのかしら…?」と唸る。 腕を組んで思案している蜜璃を横目にメモを持っている伊黒に目線を送る。 そうすれば伊黒は蜜璃が頑なに内緒にしていたメモを開封した。 うんうんと唸っている蜜璃をいいことにしのぶもそれを覗き込む。 そこには綺麗とは言い難い乱雑な筆跡で、いわゆるマニアックな性具の名称が記されていた。 「うわ……。 」 「…………。 」 思わずといった様子でしのぶから声が漏れた。 ビリィッと伊黒の手のひらの中で紙が細切れになる。 紙の断裂音にさすがの蜜璃も目をまんまると開き啞然とした。 「えっえっ!紙が?えっどうしたの伊黒さん!?」 「あら蜜璃さん。 伊黒さんが代わりに行ってくださるようですよ。 」 「そ、そうなの? でもわたしが頼まれたから最後まで……」 「いや、これは俺の方が良いだろう。 悪いな甘露寺、奪ってしまう形になって。 」 「え! そんな!! じゃあお願いしようかしら…???」 伊黒の常にない強引な物言いに蜜璃はたじろいだ様子だったが、首を傾げている間にあっという間に話がついた。 しのぶは伊黒の背から滲み出る怒りを視界の端にフゥと息を吐いた。 とんでもない輩がいたものだ。 女性に対する酷い侮辱で、嫌がらせである。 なまじ豪家の息子であるから周りも止められらずやりたい放題なのだろう。 蜜璃がこの手に関しておぼこくて良かったものだ。 しのぶと伊黒が各々の静かな怒りに身を焦がしていると、蜜璃は「あぁ!これも伝えないとね!」と突然叫んだ。 「あとね!こちらの品物を買ったらご自宅まで運んできてほしいって言われてるの。 」 どうしてかしらね?人差し指を唇に添え蜜璃は可愛らしく首を傾げる。 しのぶは思わず白目になりかけた。 ズキズキと痛む頭に眉間を抑える。 なるほど男はそのままパクリと蜜璃を頂くつもりだったらしい。 正に鴨がネギを背負ってくるというわけだ。 うまく言いくるめられる蜜璃も蜜璃である。 危機管理がなってないに過ぎる。 いつか場を作ってしっかりと説かねばなない……いちおうカナヲにもしておこうか。 「……ほぉ…。 」 (これはフォローのしようがないです……。 ) 伊黒から漏れ出る感情がピリピリと肌を粟立たせた。 流石は柱である抑えられてもその殺気は一級品だ。 周囲の空気が徐々に重くなっていく。 ほんとうにこの伊黒さんにこの件を任せていいのだろうか心配になってきた、主に男の安否が。 一方、蜜璃は肝が座っているのか抜けているのか。 伊黒の殺気をものともせずに「でも流石に殿方の家に一人で行くのはふしだらよねぇ」と呑気に独り言を言っている。 鬼滅隊が守るべき一般人を傷つけるなんて本末転倒である。 この場合、しのぶは隊員として伊黒に「落ち着いてください」と釘を刺さなければいけない。 けれど、これは、立派な変態行為。 個人的には報復、万々歳だ。 しのぶは甘露寺蜜璃の友としてにっこり笑みを伊黒に向けた。 「伊黒さん、患者は蝶屋敷に連れてきてくださいね。 」 「……あぁ了承した。 」 苛立ち気にこちらを見た伊黒は、胡蝶の背中を押す台詞に驚いたようだったが、直ぐに目に爛々と光らせ怒りの表情に戻った。 要は結果として怪我人を出さなければいいのだ。 結果良ければ全て良し。 ボロボロになった男をどう治療してやろうか、しのぶはとびっきりの笑顔を浮かべた。 蛇と蟲が密かに共同戦線を張っていたところ、そんなことをつゆも知らない蜜璃はくるりと振り向いた。 「ところでその品物っていったい何だったの?」 ゲフゥッと激しく隣の男が咳き込んだ。 あらあらとしのぶは頬に手を添える。 爆弾を放った蜜璃は私何か変なこと言ったかしら?といった表情で大きな目をパチパチと瞬いていた。 こちらに「どうにかしろ!」との視線が刺さるが、それを黙殺しコテンと首を傾げた。 「さあ私もさっぱり…なんでしょうね?」 素知らぬふりをしたのは、淑女がいかがわしいものを知っているのが恥ずかしいからだ、決して面白そうだからではない、決して。 伊黒の怒りがしのぶに突き刺さるがすぐに霧散した。 蜜璃が伊黒に曇りない目を向けたのだ。 真っ直ぐな愛しい娘の眼差しに伊黒はタジタジである。 戦闘中でも聞かなさそうなグゥと情けないうめき声をあげている。 「伊黒さん?」 愛らしい蜜璃の顔が伊黒に近づく。 視界の暴力に言葉を詰まらせていた伊黒は限界だと言わんばかりに声を張り上げた。 「……甘露寺はまだ知らなくていい…いや一生知らなくていい…っ!!」 「い、一生ぉ!?」 顔を隠し真っ赤な耳で叫ぶ伊黒と、ガーンとショックを受けて青ざめる蜜璃。 そんなふたりを見て「あはは」と無意識にしのぶは笑っていた。 後日、運悪く包帯大けがを負ったという一般人を伊黒が蝶屋敷に保護してきたそうだ。

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