ジェイド リーチ pixiv。 #ツイステッドワンダーランド #ジェイド・リーチ 巡る星、灯る熱

#1 ジェイド・リーチの片想い

ジェイド リーチ pixiv

恋愛初心者リーチが見たい!!!!!!!!!!!!!!!!!!(クソデカボイス) 赤面リーチがみたい! 口下手リーチがみたい!! 情緒不安定リーチがみたい!!! 浴びるほどみたい!!気絶するまで煽りたい!! 柔和な笑みを浮かべる紳士とか好きになるわけないわ〜と思っていた時期が私にもありました。 いや今もなんだけれども。 なんということでしょう!眉を八の字に歪め、ギザギザとした歯を見せ満面の笑みを浮かべるジェイドリーチ!!!!!!!!! そうか…君は煽り属性か…(天を仰ぐ絵文字) 敬語の煽りとかもうなんなんだ…?性癖ど真ん中一直線に出発進行だわ。 心の信号機ぶち壊してゴーサインだわ。 殺る気満々か?ありがとうございます、無事死にました。 恋愛初心者リーチ書こうとしたのに何が起きたのかよく分かりません。 マジで何が起きた? 余りに自己満。 タイトルセンス無さすぎて語感で決めました。 反省はしている。 後悔はしていない。 2019. 27追記 ルーキーランキング26位ありがとうございます!!!!!!!!!!!!!!!!!!初めてのランキング入でめっちゃ嬉しいです。 ウエハースとメタカが買えずに荒んでいた心が癒されていくのを感じます。 ありがとう。 あとタグ編集されるの夢でした、とてもうれしい。 続きは…どうしましょうね。 何も考えていなかった。 ウエハースかメタカか何かしら推しくんのグッズが手に入ったらテンション活火山で多分書きます。 いつになるかな…• 事の発端は1人の男性客と1枚のポイントカード。 支配人の前にぽつりと置かれたカードには、50のスタンプが押されていた。 支配人はカチャリと音を立てて、ズレてもいない眼鏡を正す。 考え事をするときの彼の癖だった。 しばらくの沈黙の後、徐ろに彼は口を開く。 頭の上にイソギンチャクがある訳でも、不当な契約によって馬車馬の如く働かされている訳でもない。 彼女の意志によるものだった。 理由は単純。 生活費を稼ぐためだった。 彼女ともう1人にーー否、1匹に支給されている生活費は、食欲モンスターの食費で大幅に削られていた。 当の本人(本猫?)は「働くなんてごめんなんだゾ」と言ってどこかへ行ってしまった。 まあ魔法が使えている彼はこの世界において自分より優位だから仕方あるまい。 とはいえ魔法が使えない一介の人間である自分は、行動範囲もやれることも大幅に限られている。 どうしたものかとうんうん唸っていると、モストロ・ラウンジの支配人であるアズール・アーシェングロットから声をかけられた。 曰く、「手伝ったときの手際が良かったので働かないか」と。 渡りに船と監督生は二つ返事で了承し(勿論契約書は隅々までじっくり読み込んだ)、現在に至るのである。 監督生が、大人数のグループ客が残していった皿を片付け終わり机を拭いていたときだった。 「小エビちゃ〜ん、ちょっといい?」 「はい、何でしょうか」 フロイドに呼び出されるなんて珍しい。 大抵呼ばれるときはアズールから呼び出されるものだが。 仕事で何かしてしまっただろうか。 机を拭いていた手を止め、顔を上げればちょいちょいと手を招いているのが見えた。 監督生がフロイドの意図を汲んだと分かり、フロイドはバックルームへと入っていく。 急いでいかないと機嫌を損ねそうだ。 今日は大人数の予約は入っていないし、他の寮生が片してくれるだろう。 監督生ははい、と返事をしてフロイドの背を追った。 「アズール、呼んで来たよぉ」 「ご苦労様です。 2人は下がっても…いや、居てもらいましょうか」 監督生がフロイドを追って足を踏み入れたのは、VIPルームだった。 室内には監督生を呼ばせたのであろうアズールと、呼びに来たフロイド、副寮長のジェイド。 それからアズールの正面に腰掛ける1人の男性。 監督生はその男性に見覚えがあった。 毎日のようにモストロ・ラウンジを訪れる常連客だ。 机の上には1面にスタンプが押されたポイントカードがあり、そういえばこの客は毎日限定フード付きメニューを頼んでいたな、と思い出す。 何故自分が呼び出されたのか、益々謎である。 この場にいるのがアズールだけであればまだしも、オクタヴィネル寮の主要な3人と客がいるのだ。 監督生は首を傾げ、誰かが話始めるのを待つ。 しばらく室内を無言が満たしていたが、支配人が重い口を開く。 「…お客様、もう1度願い事を仰っていただけますか」 「…監督生さんに膝枕してほしいです!!!!!!!!!」 「…は?はい」 「え、いいんですか」 「?それで呼び出したんじゃないんですか、支配人」 減るもんじゃないですし、と付け加えれば、アズールは監督生の返事に驚いたのか、無意味に眼鏡をカチャカチャと正す。 そもそもズレていないのだから正すという表現が適切なのか分からないが。 動きが不審過ぎてそういう玩具みたいだ。 フロイドがヒュウっと口笛を鳴らして「小エビちゃんがいいっつってんだしいいんじゃね〜?ほらほら、オレらは外出よ〜」とアズールとジェイドを引っ張る。 口角が上がりきっている。 楽しそうでなによりです。 ジェイドは何故か死んだ目をしていた。 アズールは未だに眼鏡をカチャカチャ鳴らしている。 監督生は3人が室外へ出ていくのを見届けると、客の方へと向き直った。 「…あの」 「膝枕お願い、します」 「…はい」 [newpage] 一方3人は。 「あっははジェイドその顔ウケんね〜、初めて見た」 フロイドに関係者専用ルームへと押し込められた眼鏡メトロノームを奏でるタコはようやく正気を取り戻していた。 死んだ目のウツボは相変わらず死んだままである。 「何でも叶える、と言っている以上仕方ないことではありましたが…この噂が広まると監督生さんが可哀想ですね」 アズールは大きくため息を吐く。 眉間には眼鏡の鼻パッドの跡がくっきり付いている。 格好つけても半減どころか面白いだけだなあ、とフロイドは思った。 「まあオレらがいれば下手なことする奴らもいないでしょ。 絞められる奴が増えれば〜、あは、オレも嬉しい〜」 「貴方、もしやそれが目的でした?」 「え〜わっかんない、あんま考えてなかった」 「フロイド!まったく…ジェイドも何か言って…」 そこで2人は先程から一言も話していないジェイドを見遣った。 「ジェイド!?ほらフロイドが馬鹿なことをするから!!貴方も知っていたでしょう!?」 ジェイドは押し込められたときの奇怪な姿勢のまま静止していた。 まあそれも仕方ない、仕方ない…のか?とアズールは思う。 ジェイドは監督生に恋慕の情を抱いており、オーバーブロッド事件のあとは一言も監督生と口が聞けないほどであったのである。 そも、監督生を雇い始めたのもジェイドの恋愛が成就するようにという幼馴染心からであった。 監督生の姿を見れば身を潜め、声を聞けば息を潜め、お前は何と戦っているんだ?という言葉を何回飲み込んだことか。 想像以上に拗らせてるな、このまま放置しても面白…このまま放置したら可哀想だと優しい優しいアズールが慈悲の心で何かしらの解決策を考えようとした矢先、このようなことが起きた。 会話ができないと悩んでいたら知らん男が膝枕してくれと彼女に頼み、彼女はそれを了承したのだ。 砂場で「砂いっぱいだ〜!」と遊んでいたらサハラ砂漠の映像を見せられたくらいの衝撃だろう。 よく分からないが。 自分もまだ正気に戻れていないのか?落ち着け。 再び眼鏡のフレームに手を伸ばしかけたとき、ジェイドが口を開いた。 「アズール」 「は、はい何でしょうか」 少し声が裏返る。 「僕にもポイントカードを下さい」 「はい……はい?」 「あと、限定フード付きメニューを17個」 「ちょ、ちょっと待ってくださいジェイド」 「限定フード付きメニューは3ポイントですから、これで50ポイント溜まりましたね…?」 「うわぁ、ジェイドやべえ」 アズールどころか、血を分けたフロイドも引き気味にジェイドを見つめる。 「とっ、取り敢えず落ち着きましょうジェイド」 「アズールも落ち着きなよ」 意外なことにこの狂った空間において1番落ち着いていたのはフロイドであった。 「まあ従業員は利用禁止ルールある訳じゃねえし、1名様〜!」 フロイドはジェイドを引き摺って部屋から出ていった。 残された支配人は意味をなさない単語を吐き出しながら、1人の眼鏡をカチャカチャと奏で続けた。 [newpage] 「限定フード付きメニュー10個目〜!お待たせ致しましたあ」 「…ありがとうございます、フロイド」 「うわ、ひでえ顔。 まだ食えるっしょ?限界なの?」 「いえ、フードはそんなに量が多いという訳では無いです」 10品目の限定フード付きメニューを目の前に、ジェイドは手製の調味料を振りかける。 男子高校生としてこの量を平らげるのは吝かでない。 メニュー考案に携わったジェイドは味変も出来る。 問題は… 「あ、ドリンク?確かに10杯目はきち〜ね」 フロイドはあは、と意地の悪い笑みを浮かべた。 ジェイドは自分の思い描く限り1番優しく微笑んだ。 「…いいですか、フロイド」 「え、何いきなり。 気持ち悪いんだけど」 言わずもがな片割れはドン引きである。 「我々は海で産まれました」 「は?うん、話が見えねえけど」 「つまり水分は我々の母です」 「何言ってんの?」 「すなわち、ドリンクは母です」 「全然意味わかんねえ、怖…」 ジェイドはドリンクからストローを抜き取ると、グラスをそのまま煽った。 手が大きいせいでそんな大きなグラスでないように見えるが、そこそこ大きいグラスである。 フロイドは、此奴母ですっつった後に母飲んでんな…と思いながら片割れを見守る。 「…ご馳走様でした、次お願いします」 「…あいよ」 片割れの監督生への執着心に恐怖を感じつつも、オーダーを厨房に通すフロイドだった。 「限定フード付きメニュー17個目ぇ、ラストだね」 「長かったですね…」 ジェイドはフッと笑い、天井を仰ぎみた。 何も知らない者が今のジェイドを見たら、何十時間とかけて登った山で筆舌に尽くし難い絶景を眺めているのかと錯覚するような笑みであった。 実際は監督生への思いを拗らせに拗らせた結果のドリンクファイトが終わっただけなのだが。 フロイドは今日何回目になるかも分からないドン引きの表情を浮かべた。 「フロイド、会計をお願いします」 「ん、1500マドルの限定フード付きメニュー17個で25500マドルになりまぁす」 「25500マドルで監督生さんにお願い事ができるなら安いものですね」 その分生活に困窮している監督生さんに渡したら喜ばれるのでは?とフロイドは思ったが、幸せそうなジェイドの表情を見て何も言うことが出来なかった。 [newpage] 「え、帰った?」 「ええ、今日のシフトは終わりましたし」 関係者専用ルームに取り残されていたアズールは数十分後回復し、VIPルームで書類の整理をしていた。 ポイントカードを全て埋めたジェイドがVIPルームに駆け込んで「監督生さんは!監督生さんは何方に!!」と叫び、そして冒頭である。 「…では明日、ですかね」 明らかに落胆した様子の幼馴染に慰めの言葉をかけようとし、「そういやコイツほとんど口聞いたことない女の子にお願い事するために1500マドルのフードセット17個頼んだやべえ奴だった」と思い直して口を噤んだ。 「ジェイド、貴方はそこまでして監督生さんに何を頼むおつもりです?」 ため息混じりに至極当然の疑問を吐き出した。 「…考えてませんでした」 「…は?」 「あ、同じ部屋に1時間滞在するとかいかがでしょう?」 「いかがでしょう、じゃないです。 貴方1時間監督生さんと喋れるんですか?会話のない1時間なんて合コンで元カノと今カノと浮気相手同時に鉢合わせたどころじゃない気まずさですよ」 「…無理ですね」 「1時間無言で同じ部屋に居続けろと言われたら嫌がらせかな、と思われますよ。 そもそも僕たちは監督生さんにあまり好い印象を持たれていないんですから」 「…」 アズールは少し言い過ぎたかな、と思ったが、「そういやコイツ殆ど口(以下略)」と思い直した。 皆女の子ってしってる。 モストロ・ラウンジ勤務の際はオーダーメイドのワンピースを纏っている。 ジェイドさんに避けられる。 「私何かしたっけ…?契約書めちゃくちゃにしたのまだ怒ってるのかな…怖…」 ・ジェイド・リーチ 恋情拗らせたウツボ(17)。 なんで惚れたか分からないけど、なんか好きだなあって思ってたらいつの間にかこじらせてた。 初恋だもん…。 前に1度、勇気を振り絞って話しかけようと見つめてたらガンつけられてると勘違いした監督生に悲鳴あげられた上逃げられて傷心。 モストロ・ラウンジ仕様のワンピースは直視できない。 ・アズール・アーシェングロット 思ったより幼馴染が拗らせてるし応援したいと思っている(笑) ・フロイド・リーチ 血を分けた双子が拗らせててドン引いている。 面白けりゃいいっしょ半分、監督生がポイントカードOKすればワンチャンジェイドも…?半分で2人をVIPルームから追い出した。 流石に1日で50ポイント貯めるとは思ってなかった。

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ケンカップルの恋愛事情【ジェイド・リーチ】

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最初の印象は、とてもつまらない女だなということだった。 魔法が使えないのに事故でこの世界に来てしまったという少女は、無表情で無感動。 いつもボケーっと風景を見ているような子で、陸の生物としての興味もそこまで湧かなかったのを覚えている。 そんな彼女が、瞳をキラキラさせてこちらを見つめていたので、ジェイドは面食らった。 怖がられることはあっても感動されたことなどない。 人魚の世界でも異質な上半身にも色濃く魚の特徴を残した自分と片割れの姿を、たった今まさに自分たちから害されている側の少女が見ている。 まるで新しいおもちゃを貰った子供のような瞳で、口からは感嘆の声を漏らしながら。 その瞬間、ジェイドはその少女に滅法興味を持ってしまったのだ。 「おや、監督生さん」 「……あぁ、ジェイドさんですか。 こんにちは」 「こんにちは。 今日はどちらの授業に?」 「魔法史です」 「同じですね。 ご一緒しても?」 「?はい」 あの事件から数日。 あの瞬間確かに光を宿した瞳は、今はもう見る影もない。 肩に乗るグリムを気にする素振りもなくスタスタとジェイドの前を歩く少女に、ジェイドは静かについて行った。 会話はない。 特に会話らしい会話もなく教室に到着し、先に教室にいたフロイドが「小エビちゃーんこっち」と呼ぶのにしたがって、監督生はその隣に座った。 ふむ、とジェイドは思考する。 どうすればあの日のような無邪気な子供のような顔が見られるのかと。 しかし、そもそもあの日の表情の理由が分からないので、ジェイドは困った。 なぜ見たいのか、そんな自分の感情の理由は全く気にしていなかった。 「フロイド、貴方監督生さんとは仲がいいので?」 「んえ?別に?会えば話すけどわざわざ話しかけには行かねーよ」 「彼女の笑った顔を見た事は?」 「……ねえかなぁ。 それを足を振って引き剥がしながら、ジェイドは考える。 やはり彼女は誰に対しても この一般からしたら鬱陶しいと言われる片割れに対しても 無表情らしい。 しかし、自分はその無表情に対して面白いとは思わないがフロイドはそれが面白いようで、ことある事に構っている様だ。 「あの時のような顔がもう一度見たいんですがねぇ」 「あの時?いつ?」 「僕たちが人魚に戻った時、一瞬こう、目が輝いたというか」 「うっそぉ、オレ気付かなかったけど。 ジェイドよく見てんね」 「いや、目に入ったというか、なんというか」 「よっぽど小エビちゃんのことばっか見てたんでしょやらし〜」 「……え?」 「だから、ずっと見てたから気付いたんでしょ」 「…僕が、監督生さんを?」 「え、逆にそれ以外ある?ジェイド小エビちゃんが近くいるとスッゲー見るじゃん」 「……」 「気付いてなかったの?恋じゃん」 「コイ?」 「恋」 「僕が?監督生に?」 「だからそうだってめんどくせーな」 振りほどかれたフロイドがジェイドに向かってうげぇと顔をしかめる。 甘ったるくて胸焼けがした。 あの子のことが気になって目が離せないんですと告白されたような気分だったのだ。 当の本人は全く気付いていなかったけれど、近くにいた第三者のフロイドは気付いていた。 きっとアズールも気付いている。 ジェイドはフロイドに言われて、そして急に腑に落ちてしまった。 そして後悔した。 ああ、なんてことだ。 壁しかない。 彼女はそもそも人間で、異世界の住人で、陸の生物で、年下で、この学園唯一の女子だ。 「一番選ばない方がいい相手を選んでしまいましたね」 「え?なんで?」 「だって監督生さんは陸の方ですし…」 「あ、ちょいまち、双子だから分かったわ何考えてるか。 なるほどね、完全に理解した」 「してませんよね」 「してないけどした。 てかさぁ、どうでも良くね?小エビちゃん人魚にするかジェイドが陸に住めば解決。 異世界に帰るってなったら行き来できるようにしたら良くね?」 「簡単に言いますね」 「簡単でしょ。 自分が好きな相手が自分のことを好きになってくれる確率よりも何万倍も楽勝。 やりゃできる」 「……確かに。 フロイドは天才ですね」 「もっと褒めていいよ」 「とりあえず今から男子会開いても?」 「待ってましたァ」 ジェイドはフロイドがなんてことは無いとあっけらかんと言うので、ついさっき浮かんだ壁を全て壊した。 どうでもいいでは無いかそんなこと。 女子なのは幸い、異世界とか正直なんとかなるだろうし、魔法が使えるから好きになったわけじゃないから関係ないし。 何だ、なんの壁もない。 取り急ぎジェイドが気にしなければいけないことは、監督生が自分に興味がないであろうという事実だけだった。 なので、男子会を開くことにした。 ジェイドの言葉でフロイドが飛び起きて壁を叩く。 アズールの部屋に繋がる壁だ。 ドンドンドンドンドン叩きながら「酒とツマミ!!!!!!」と叫んだ。 これがこの3人の「男だらけの限界飲み会」の合図だったので。 数分もすれば双子の部屋の扉がバン!と開いた。 手に大量の酒とツマミを持ったパジャマ姿のアズールが居た。 「寮長をウーバーイーツ扱いとは偉くなったものですね」 「一番ノリノリの癖して何言ってんの?会場に入る前に正気失っといて」 「母さんの子宮に置いてきました」 「最高」 アズールはスタスタ部屋の真ん中に歩いてきて、手に持っていた物をドサドサ置いた。 会場の完成だった。 その酒やらツマミやらを3人で囲んで、とりあえず乾杯する。 絶対3人のうち誰かがグラスを割るので、限界男子会は基本ブルーシートの上で行われた。 最初の乾杯でフロイドがグラスを割った。 「で?議題は?」 「ジェイドが小エビちゃんに恋したって」 「え?結婚するんですか?」 「誰がそこまで言いましたか。 なんとなく気になるかもと言うだけです」 「オスのくせになにカマトトぶってんですか。 本音で話しなさい本音で。 かじりとる歯」 「普通に好き」 「はい結婚おめでとう」 「小エビちゃんが義妹かぁ」 男たちは適当だったので、2回目の乾杯をした。 今度はアズールがグラスを割った。 「いや、監督生さん僕に興味なくないですか?」 「逆にあの子興味持ってる人間いるんですか?」 「いないだろうね。 つまりスタートラインは一緒。 スタートダッシュキメてそのまま式場までトップ独走しようぜ」 「でも、ほら、あのハーツラビュルの一年生の二人とか…」 「あれはどっからどう見てもダチでしょ。 男女って感じしねーもん」 「仲のいいお友達程度に負けていいんですか」 「それでもウツボかよ」 「関係ないでしょうが」 ジェイドは酒を飲みながら話していて、つい30分ほど前まではただの少し気になる後輩だった監督生が「好きな女の子」になっていくのに戸惑った。 話せば話すほど、あれ?自分かなり監督生のこと好きでは?と思ってきてしまったのだ。 なんだか流されたようで腑に落ちないところもあるが、そもそもただの後輩に流されて恋しちゃったかもなんて言うようなタマではないので、その辺はフロイドとアズールも「あ、わりと本気じゃん」と思った。 なので、安心して押した。 「とにかく小エビちゃんにも意識してもらわないとなんも始まんなくね?通えば?」 「どこに」 「オンボロ寮」 「一人で住んでる女性のところへ通うのはあまり感心しませんが時と場合によりますからね」 「アズール的にはこの理由で通うのはアリ?」 「ありよりのあり」 「肯定しかしてねぇじゃんウケる」 「僕抜きで話進めないでください」 「だって臆病なウツボがチキってんだもん。 通うかモストロ通ってもらうか選べ」 「……モストロで」 「はいチキリーチ。 通うくらいの度胸みせろや」 「うるさいですよ童貞・リーチ」 「あなたたちお互いに言ってて虚しくないですか?」 「虚しい。 心に傷を負った。 明日モストロ休みます」 「僕も休みます」 「こらこらこら」 三人寄れば文殊の知恵とは言うけれど、男三人寄れば酒とツマミが減るばかりで建設的な会話などされないのが世の常だった。 しかも男子高校生なので、隙あらばふざける。 結局ジェイドは特にいい案も貰えず、ただただ自分が監督生を好きになってしまったことを幼なじみと片割れに暴露するだけで終わった。 ただの公開処刑じゃないですか、とジェイドがボヤいたけれど、フロイドもアズールも愉快犯なので気にも止めなかった。 いいぞ、もっとやれ、ついでに大失敗して嫌われろ。 悲しいかな、ダチの恋愛劇ほど面白いもんは無いのである。 フロイドは二日酔いで死んでいた。 もちろんジェイドも死んでいるのでバーカウンターの中でボケーッとしている。 二人ともしっかり死んでいたので、急に来た監督生になんの反応も出来なかった。 ジェイドに至っては気付いてすら居ない。 フロイドは偶然入口を通り掛かって、偶然監督生に声をかけられて、昨日の話を思い出した。 考え事をすると頭が痛むので、本当は何も考えたくなかったけれど、片割れの恋路は応援したいので。 なのでフロイドは特にジェイドには何も伝えず監督生をバーカウンターの席に案内した。 ジェイドは監督生が目の前に来てやっと気付いて、聞いたこともないような声を口から漏らしていた。 「ジェイド先輩、こんばんは」 「こ、こんばんは。 珍しいですねモストロにいらっしゃるの」 「今日はジェイドさんが珍しくバーカウンターに居たってさっきエースに聞いたので」 「へ、」 「普段はフロイド先輩なんですよね?せっかくなんで暇だったし見に来ました」 「そ、それはそれは、光栄ですね」 そういえばさっき、ハーツラビュルの一年生がいた気がする。 その友達から話を聞いて、自分を見に来たのだという監督生にジェイドは心臓を撃ち抜かれた。 あ、もう普通に好き。 昨日も思ったけれど、やはりあれはその場のテンションとか酒の勢いではなかったようだ。 しっかり監督生の事が好きだった。 監督生はジェイドにドリンクを注文して、ボーッと水槽の中を眺める。 ずっと表情は無だったけれど、何にも興味のなさそうな監督生が特にたくさん魚が泳いでいる訳でもない水槽を眺めるのが不思議だった。 「お好きですか?魚」 「魚…というか海が好きなんですよね」 「おや、監督生さんは海派ですか?」 「だって、あんなに広くてあんなにたくさんの生き物がいて、あんなにしょっぱいの不思議じゃないですか?」 「ふふ、確かに言われてみれば」 「先輩たちが陸に憧れたり興味を持ったりするのと一緒なのかもしれませんね」 ジェイドは会話を続けながら、無表情だけれど無口では無いのだなと思った。 興味のないことを喋らないので無口だと思われがちな監督生だったけれど、別に無口ではないのだ。 面倒臭がりで特に率先して話すタイプではないだけ。 監督生のことを自分はそんなによく知らないのだな、当たり前だけれど。 ジェイドはそう思って、新しい監督生の一面を知れたことを嬉しく思った。 知らなかったことを悲しむ余裕なんてないので。 今は監督生という女性のことを知って、そして向こうにも自分のことを知ってもらう時期だとジェイドは思っていた。 「僕たち人魚の中には将来陸へ上がって人間になるのが夢だという人もいますから、陸への憧れは誰しも少なからず持っていますねぇ」 「気持ちわかるなぁ」 「というと?」 「…恥ずかしいのでナイショですよ」 「はい」 「私、昔は大きくなったら人魚姫になりたかったんです」 監督生は無表情のままだった。 無表情のまま、少しだけ恥ずかしそうな声色で、こっそりジェイドにそう言った。 ジェイドはその仕草が目に焼き付いて離れなかった。 知らない一面を知りたいとは言ったけれど、こんなにも破壊力のあるものはまだ自分には耐性がない。 その様子を遠くから見ていたフロイドは終始ニヤニヤしていた。 双子であるが故にジェイドが平気そうに見えて内心焦りまくっているのが分かったので。 「私たちの世界では人魚は空想上の生き物ってことになってるんですけど、物語?の中で人魚姫の物語があるんですよ。 それを小さい頃に読んで、その時に大きくなったら人魚姫になりたいなぁって思ったんですよね」 「そ、そうですか、」 「はは、似合いませんよね」 「そんなことないです!」 「へ、」 「お似合いですよ、とても、監督生さんは声が綺麗ですし、それに髪も美しい、人魚姫は代々そういう人魚が選ばれるので、監督生さんが人魚だったら、きっと、」 ジェイドは必死に話した。 似合わないなどと言って少しだけ悲しそうな表情をした監督生に、そんなことは無いと熱弁した。 熱弁して、ハット我に返る。 これは結構、いやかなり鬱陶しいのでは?やってしまったと落ち込みかけたジェイドの目の前で、監督生は目をぱちくりさせていた。 そして、監督生は堪えきれないと言うようにふふっと笑った。 「ありがとうございます、ジェイドさん」 ほんの数秒顔を綻ばせて笑った監督生を、ジェイドはしっかりと見た。 あの日のように目を輝かせた子供のような表情ではなかったけれど、嬉しそうに笑う少女のような表情だったけれど、ジェイドはそれが見れたのが嬉しくてたまらなかった。 こんな顔で笑うのか、と優越感すら覚えた。 きっと、近しい人しか見たことがないのだろう。 直ぐに無表情に戻ってしまった監督生の視線は、また水槽に向かった。 「あの、監督生さん」 「はい」 「僕今から水槽の魚に餌をやるので、少し離れますね」 「あ、はい、エサ?」 「モストロではこの時間に餌やりをするので」 ジェイドはそう言うとさっさとバックヤードに戻った。 もちろん嘘である。 基本的にエサは営業後にお客がいない時にあげるので。 しかも、ジェイドは人前で人魚姿になるのを嫌った。 プライドが高いので、見世物になるのを嫌がったからだ。 けれど、そんなジェイドの思春期故のプライドはゴミ箱に突っ込まれた。 彼女が笑ってくれるかもしれないと思えば行動しない理由がなかった。 ジェイドはあっという間に寮服からタオル一枚腰に巻いただけの姿になって、通路を通って水槽の上まで来た。 そのままボチャンと飛び込んで、人魚姿に戻る。 店内にいたお客はなんだなんだと水槽の前に集まってきた。 ジェイドは、その中から小さな少女を探す。 バーカウンター、いない。 テーブル席に移った?いない。 キョロキョロと、理由にした餌やりをすることもなく、少女を探した。 「わぁ」 聞こえるはずのない声が聞こえたような気がした。 そこには、水槽にぺたりと手をつけて、ジェイドを見つめる瞳があった。 キラキラとした瞳の中に、少しばかりの感嘆を込めて、ジェイドを見つめていた。 ジェイドはゆらりと尾びれを動かして、監督生の前まで泳ぐ。 ガラス越しに目が合った。 監督生はじいっとジェイドを見つめたあと、口をパクパク動かして、そしてニコリと笑った。 「キレイ」 聞こえなかったけれど、きっとそう言ったと思った。 キレイだとジェイドを見つめて呟く監督生を見て、ジェイドはどうしようもなく胸がむず痒かった。 人魚になってたけど」 「ふーん、いいなぁ、俺がいた時にやってくれたら良かったのに」 監督生は廊下を歩く。 肩にグリム、左隣にエース、右隣にデュースがいた。 監督生は昨日のジェイドを思い出して、そして少しだけ笑った。 「キレイだった。 好きだなぁ、ジェイド先輩」 「……趣味悪ぅ」 「監督生、ずっとそればっかだな」 聞き飽きたと言わんばかりにエースが顔を顰めて、恋する乙女を見守るようにデュースが笑いかけた。 二人は知っていた。 監督生はあのジェイド・リーチに恋をしているのだと。 それを全く周囲に悟られることもなく、仲のいい自分たちだけに告げて、今はまだ片想いを楽しんでいるのだと。 「女子って訳わかんねぇ。 片想いって楽しいの?」 「楽しいよ」 「向こうの気持ちわかんなかったりして辛くないか?」 「……向こうの気持ちはわかんないけど、好きにさせるからいい」 「げぇ、肉食、ジェイド先輩かわいそ」 監督生はそう言うと、いつもの無表情に戻った。 無表情だからといって、感情が無いわけじゃない。 監督生はちゃんとジェイド・リーチに片思いをする少女だった。 好きな相手の新たな側面を知れば、そりゃ目を輝かせたくもなる。 ジェイドは気付かないだけで、まんまと監督生に惚れさせられたのだ。 監督生は片想い期間を十分に楽しみたいタチであった。 だからこそ、ジェイドは監督生がまさか自分に興味があるだなんて思いもよらなかったのだ。 恋心に目覚めたばかりの恋愛初心者、ジェイド・リーチがそれを知るのはまだ先の話である。

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#ジェイド・リーチ #女監督生 ジェイド・リーチは拗らせたい!

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この学園に来てから数ヶ月。 オクタヴィネル寮のいざこざが片付いたと思ったら、もう秋も終わりそうだ。 オンボロ寮へ帰る途中、冷たい風が汗ばんだ首筋を撫でたので、思わず身を縮めて腕の中のグリムを抱きしめた。 胸元から唸り声が聞こえて慌てて腕を緩めると、額にシワを寄せたグリムが目を閉じたまま軽いいびきをかき始めた。 ご馳走をみっちり詰め込んだ小さな体は思ったよりも重く、いい気なもんだと悪態をついた。 今夜はエースとデュース、グリムのイソギンチャクからの解放を祝って、ハーツラビュル寮で軽い打ち上げをした。 持ち寄った惣菜やトレイ先輩が差し入れてくれたケーキを食べながら、おしゃべりしたりトランプで遊んだり。 グリムは相当疲れていたのかゲームの途中でウトウトと眠ってしまい、門限に厳しいリドル先輩に促され慌てて片付けた帰り際にも、どれだけゆすっても起きないため、そのまま抱えて寮を後にしたのだった。 寮への道のりの半ばまで歩いたが、流石に腕が痺れてきたので道中にあるベンチに座って休憩することにした。 グリムを膝に乗せて一息つき、なんとはなしに空を見上げた。 歩いている最中は暗い足元に気を取られて気付かなかったが、思ったよりも星がたくさんきらめいていて、おぉ、と思わず感嘆の声が漏れる。 そのまま星を眺めていると、すぐ近くから声がした。 「おや、こんな遅くに誰かと思えば、オンボロ寮の監督生さんではありませんか」 「ジェイド先輩」 声の主は今回の騒動の中心人物の1人、ジェイド・リーチ先輩だった。 「膝のそれは…グリムですね。 随分と膨れているようですが」 不思議そうにグリムを眺めるジェイド先輩に苦笑混じりに答える。 「さっきまでハーツラビュル寮で…パーティーをしてまして、これから帰るところなんです」 「ああ、アズールの契約から解放された打ち上げですか。 その節はお世話になりました」 先輩が軽く頭を下げる。 なんとなく言いづらくて濁した言葉を一瞬で見破られてしまった。 気まずくなって言葉を続ける。 「ええと、アズール先輩の調子はどうですか?」 「ふふ、普通に生活できる程度には回復しましたよ。 でもまだ体のあちこちが痛むようで、授業が終わるとタコらしく自室に引っ込んでいますが」 「……」 …いや気まずいな!? こっちが悪いことしたわけじゃないはずなのになんとなく罪悪感が刺激される。 話題選びがうまくなかったか。 かと言って他の話題も特に思いつかない。 双子の兄弟のフロイド先輩は小エビちゃんなどとあだ名をつけて可愛がってくれる あくまでもフロイド先輩の基準で が、ジェイド先輩とはあまり話したことがないのだ。 そんな心の中までお見通しなのか、あたふたする私に向けて、先輩は笑顔のままで言った。 「折角ですから私ともう少しお話ししませんか?」 「え、でももう遅いですし」 「少しだけ、です。 いいじゃないですか、明日は休みですし、たまには夜更かししても」 そうのたまいながら隣に腰掛ける先輩。 結構押しが強い!…いやこの人はこういう人だった。 フロイド先輩は気分の浮き沈みが激しくスイッチがどこで切り替わるか分からない怖さを感じる一方、ジェイド先輩は物腰は柔らかく口調も穏やかだ。 しかし今回の事件でそれがあくまで表面的なものだということは身に染みて理解している。 フロイド先輩のぶっ飛んだ言動に怯えた客を、その柔らかな物腰で懐柔していいように操る。 あくまで穏やかに、丁寧にじわじわと退路を断って行くのだ。 この2人が合わさればもちろんのこと、ジェイド先輩だけでも学園の中で相当怖い部類に入るだろう。 ここは大人しく従ったほうがよさそうだと、観念して腹を据えた。 「じゃあ…ジェイド先輩は何をしていたんですか?学園や鏡舎とこっちは反対方向ですけど」 「ああ、植物園に用があってそっちに行っていたんです。 施錠して帰るところだったのですが、星がよく見えたので眺めていたらこんな時間に」 「星ですか。 今日はいい天気でしたもんね。 星が好きなんですか?」 「海の中からでは星はほとんど見えませんからね。 昔フロイドと度胸試しで水面から顔を出して見て以来、興味を持っていたのですよ」 そういうと先輩はおもむろに星々を指で指しながら名前を上げていく。 「わかりやすいところでいうと、あの一際輝く星がシリウス、その上にあるのがペテルギウス、左側がプロキオン、この三つが冬の大三角と呼ばれる星です。 さらにペテルギウスの右斜め下、三つ星が並んでいるところを中心に砂時計のような形が見えますね。 あれがオリオン座です」 「へぇ、詳しいんですね!」 「本で調べたりしましたからね、一通りは覚えましたよ。 あんなに遠く小さな光の並びに物語を見出すなんて、陸の人間は本当に想像力が豊かだと感心せざるを得ません」 穏やかな笑みはそのまま、なんとなくいつもより弾んだような声色に少し拍子抜けする。 案外人間らしいところもあるのだと失礼なことを思っていると好奇心がむくむくと湧いてきて、警戒心を覆い隠す。 少しくらいなら話をするのもいいかもしれないな。 こうして私たちはお互いのことを話し続けた。 ジェイド先輩は海の生活のこと、所属している山を愛する会のこと、お気に入りの靴の話を。 私は同じクラスの仲間のこと、魔法を使う授業では何をしてるのか、得意科目、苦手な科目、食べ物の好き嫌い、趣味、放課後の過ごし方、休みの日の予定、あと元の世界のことも少し、…? あれ、私の方がたくさん話をしているような? ジェイド先輩は相当聞き上手なようで、会話の中で自然に差し出される質問に答えているうちに色々喋っていたようだ。 ふと思うことがあり、今まで聞かれたことについてちょっと考えてみる。 ええと…これは。 「…」 「おや、どうされました?」 「もしかして、お話ししたいっていうのは情報収集的な意味ですか?今後何かの契約に使えそうだとか」 ジェイド先輩は少し目を見開いたように見えたけれど、次の瞬間にはさっきまでと変わらぬ笑みをたたえていた。 「これは…心外ですね。 情報収集という意味では同じようなものですが…」 ふむ、と先輩は少し考え込むようなそぶりを見せると、唐突に私の手を取った。 そのまま指先が彼の口元に引き寄せられる。 指先に息があたり熱を持つ。 「個人的に、貴方に興味があるのですよ」 楽しそうに細められた金色の目がチカッと光ったように見えたのも束の間、こちらが声を上げる前に掬い上げられた手はパッと離されてしまった。 「今夜はゆっくりお話ができてとても楽しかったです。 今度は是非こちらの寮にも遊びににいらしてください。 そうです、来週水曜日の放課後は予定がないと仰いましたね。 とっておきの茶葉を用意してお待ちしています」 それではまた。 そう言い残して鏡舎の方へ歩き出した彼を、呆気にとられてベンチから立ち上がれずにただ見送る。 そのまま後ろ姿が見えなくなり、ハッとして立ち上がると、膝の上に抱えていたグリムが転がり落ちた。 慌てて様子をみると、まだぐーすかと寝こけていて、思わずため息が漏れた。 こちらの気も知らないで、のんきなやつめ。 グリムを抱え直して寮への道を辿り始める。 別れ際のあの言葉、つまり寮に遊びに行くことを約束したことになる…のか? いやでも返事してないし、一方的に言われただけだし、なんか怖いし…だめだすっぽかした方が怖い。 あの先輩のことだ、紅茶のかわりに何を求められるのやら。 お守りとしてはささやかだけれど、お茶請けは用意しておこうか。 そんなふうに思考を巡らせ、指先の熱を思い出さないようにする。 なんだか頬が熱いのは、心臓が跳ねるのは、お腹いっぱいのグリムを抱えて歩いたせいにしておこう。 あれは好意か、それとも罠か。 何はともあれ、今までとは少し違った何かが彼との間をぐるぐる巡り始める予感がした。 それこそ星とか小魚みたいに。

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